- 作者: 今柊二
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2017/01/06
- メディア: 新書
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Kindle版もあります。
- 作者: 今柊二
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2017/06/09
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内容(「BOOK」データベースより)
オムライス、エビフライ、ナポリタン…みんな大好き、日本が誇る洋食屋さん約100店を紹介。ルーツをさかのぼって老舗ホテル、軍港の呉、産業都市の苫小牧。はたまた懐かしのデパート食堂、普段遣いのファミレス、がっつり学生街。ご存じ「定食評論家」が津々浦々で食べ歩く!
この新書の著者である今柊二さん、僕にとっては、書店で新刊を見かけると、なんとなく手に取ってしまうのです。
「定食評論家」を名乗る柊さんの主なフィールドは「食べ物」、それも超高級店ではなく、街でよく見かけるような「定食屋」を食べ歩き、その料理の写真と味をレポートしつづけている人なんですよね。
今回のテーマは「洋食」なのですが、一歩引いて冷静にページをめくってみると、掲載されている写真はカレー、オムライス、ハンバーグ、ビーフシチューなど、まさに「洋食の王道」ばかり。茶色い食べ物がずらっと並んでいるのは、壮観でもあり、「同じようなものばかり」でもあります。
今さんの「定食話」って、なんだか癖になるというか、なんだかホッとします。
僕自身は、最近あまり「洋食らしい洋食」を食べる機会がないのですが、この本を読んでいると、ハンバーグステーキをレストランに食べにいくのが楽しみだった子どもの頃を思い出します。
あと、「値段の割に量が少ないし、シチューにしては液状成分に乏しい」のがずっと不満だった「ビーフシチュー」が、洋食の世界では、こんなに魅力的にみえるんですね。
日本の洋食の代表格ともいえる「ハンバーグ」は、洋食店のメニューとしても太平洋戦争前から存在していたそうなのですが、以前は「挽肉料理のバリエーションのひとつ」でしかなかったそうです。
ただ、「たいめいけん」の初代店主の茂出木心譲さんの『洋食や たいめいけんよもやま噺』(角川ソフィア文庫、2014年)によると、挽肉料理ではメンチボールのほうがかつてはメジャーだったそうだ。これはハンバーグと同様の料理で、もう1つジャーマンビーフというのもあったそうだ。茂出木さんは仲間とこの3つのどこが違うのかよく話したそうだ。本書によると「ハンバーグはハンバーグステーキだから肉汁をソースにするんだとか、メンチボールはがんもどきのように丸い形にするんだとか、ジャーマンビーフは玉ねぎをたくさん入れて、表面にきれいにすじ目をつけるんだ」とか話したそうだ。ちなにに、他の挽肉料理ではゆで玉子を挽肉で包んだ料理の「フーカデン・ビーフ」(蒸し焼き。海軍料理としても有名)、「スコッチエッグ」(こちらもゆで玉子を挽肉でくるんで揚げる)、「ミートローフ」などがあるが、これらは最近洋食店ではあまり見かけない。
つくっている側も、あまり明確な違いがわからなかったのか……
そんななかで、「ハンバーグ」は、突出してメジャーになった、ということなんですね。
というか、「みんなハンバーグということにしてしまった」のかもしれません。
「ハンバーグ」といっても、昨今は本当にたくさんのバリエーションがありますし。
洋食って、他の人が食べていると、なんでこんなに美味しそうにみえるのだろうか。
横浜・福富町のイタリアーノの「ナポリタン」の項より。
かくして完成したようで、銀の皿に載って登場! おっほー! これだ、これ! まずはパルメザンチーズをたっぷりかけてフォークで食べる。口のなかで、もっちり太麺の味わいがソースとともに広がっていく。ここのはナポリタンと言いつつ、トマトソースの中に挽肉も入っていて、ミートソースの麺も持っているもの。さらに具は、エビとアサリ、そしてタマネギがたっぷりと入り、海と大地の双方のおいしさがブレンドされている。エビはプリブリ、アサリはしっかり、スパゲティ(パスタではありません)はもちもち、ソースはネットリと、すべてが絶妙の組み合わせ。まず他では食べることのできない「おいしさ」となっている。あっ、サンロードでも食べることができるな。
いやあ、それにしてもおいしい。全身においしい感動が豊かに広がっていくようだ。今日はここに来て本当に良かったと涙ぐんだのであった(それほどこれはおいしいです)。
「ナポリタン」なんて本場にはない、とか、「スパゲティじゃなくて、パスタ!」とか言われることもあるのですが、よくできたナポリタンって、本当においしいんですよね。
これを読んでいるだけで、食べたくなってきます。
あと、横浜のみなとみらいにあるハードロックカフェでのこんな出来事も紹介されています。
ご飯を食べようということになり、子どもの提案もあって、ハードロックカフェに行くこととなった。まだ入ったことがないなあ。ということで、入口まで行くと、少し待ってくれと。呼ぶときには好きなアーティスト名で呼ぶとのことで、それを聞かれる。子どもにも「パパ言ってよ」と言われたので、とっさに「YES」と言ってしまう。ワハハ。
かくして、意外と早く「YESさま」と呼び出され、店内に入る。
僕はアメリカで何度かハードロックカフェに入ったことがあるのですが(ハンバーガーが美味しかったです)、こんなサービス(?)はありませんでした。
でも、こういう「好きなアーティストを」って、突然聞かれたら、けっこう困りそうだよなあ。
「イエスさま」って、誤解されそうだし……
自分の名前で呼ばれたくない、という人がけっこういる、ということなのでしょうか。
この本、九州在住の僕にとっては、残念ながら日常的に使えるガイドブックにはならないのですが、東京近辺に住んでいる人なら、役にも立ってくれるはずです。
すごく役に立つとか、面白い!っていうわけじゃないけど、読んでいて和むし、傍に置いておきたくなる、そんな一冊です。