琥珀色の戯言

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【読書感想】メタ思考トレーニング 発想力が飛躍的にアップする34問 ☆☆☆☆


Kindle版もあります。

内容紹介
メタ思考とは、「物事を一つ上の視点から考える」こと。その重要性はしばしば語られますが、実践するのは容易ではありません。例えば自分自身を「幽体離脱して上から見る」こと(=メタ認知)は、自己成長のためには必須の姿勢であるとよく言われますが、実際にそれができている人はそう多くはないでしょう。
そこで本書では、メタ思考を実践するための二つの具体的な思考法(「Why型思考」と「アナロジー思考」)を紹介するとともに、それをトレーニングするための演習問題を多数用意しました。

●問題:「信号機」と「特急の停車駅」の共通点は?
●問題:「経理業務」と「スポーツ審判」の共通点は?
●問題:「タクシー」と「土産物屋」の共通点は?
●問題:お寿司以外の「回転○○」を考えよ。
●問題:「顧客の気持ちに絶対になれない職業」とは?
●問題:「年賀状がたくさん来る人」とはどんな人?

……問題を解いていくうちに思考回路が変わり、考える力が飛躍的にアップする1冊!

【本書の構成】
第1章 ウォーミングアップ編
第2章 Why型思考のトレーニン
第3章 アナロジー思考のトレーニン
第4章 ビジネスアナロジーのトレーニン


 Kindle本の新書人気ランキングでずっと上位にいるんですよね、この本。
 もちろん、Kindle unlimitedの「定額読み放題」に含まれているというのも大きいのでしょうけど、その中にもたくさんの本があるわけです。
 僕は基本的には、お金を払っても読みたい本から読むことにしているのですが(もう余命もそんなに長くはなさそうなので)、なんとなく気になって(そして正直、今月は本代がかさんでいるので)読んでみました。

 本書のテーマは「メタ思考」です。
 メタという言葉はあまり馴染みのない言葉かもしれません。文字通りの意味は、あらゆるものを一つ上の視点から客観的に見てみるということです。
 例えば「もう一人の自分の視点で自分を客観視してみる」ことが重要だと言われることがあります。このように自分自身を「幽体離脱して上から見る」ことは「メタ認知」と呼ばれ、視野を広げて自分を客観視するために必須の姿勢であると言われています。
 要は、様々な物事を「一つ上の視点から」考えてみることが重要だ、というのが本書で伝えたいメッセージです。


 「一つ上の視点から」って言われても、なんだかよくわからないですよね。 
 しかしながら、この本を読んで、まるでクイズみたいな問題を考えてみると、なんだか少し、自分の視野が広がったような気がするのです。


「基本編」の最初に、こんな演習問題が出てきます。

【演習問題】皆さんは(上司やお客様から)「ドローンについて調べて報告して」と言われました。次に取るべきアクションを一分間でなるべく多くあげてください(目安:十項目)。


例:
・インターネットで検索する
・(社内でよく知ってそうな)○○さんに聞いてみる
・関連書籍を買う


 例にあげられている3つくらいは思い浮かんでも、10個となるとなかなか難しい。
 著者は、こんなふうに【解説】しています。

 以下のチェックポイントにしたがって、皆さんの思考の癖を確認してください。


 まず一つ目のチェックポイントですが、皆さんがあげたアクションを大きく二つに大別してみてください。
 一つは、
(1)「ドローンについて調べる」というその依頼事項を実行することを前提として、それをどうやって「具体的に」「実行するか」に関してのアクションです。例えば、
アメリカの導入事例をネットで調べる
・海外の入門書の電子書籍を読む
・試しに安いドローンを自分で購入してみる
 といったことです。


 そしてもう一つは、
(2)「なぜドローンについて調べる必要があるのか?」と問題そのものに一度疑問を呈して、依頼のそもそもの目的を確認するためのアクションです。例えば、
・「その調査結果を何に使うのか」を依頼主に確認してみる
・調査目的が何かの仮説を立てる
 といったことです。


 多くのアクションは(1)のタイプだったと想像しますが。中には(2)の方向性で「そもそもの目的を確認する」といったアクションをあげた人もいるかもしれません。
 これは皆さんの思考回路が、具体性、実行重視のHow志向か、目的重視のWhy志向かのチェックです。もちろん本書でいうメタ思考に近いのはWhy志向のほうです。

 
 このように、問題解決におけるメタ思考とは、いきなり問題を解き始めるのではなく、まず「問題そのものについて考えることを意味するのです。


 一読すれば、「なるほど」という話なのですが、僕は「○○について調べて」という課題に対して、(1)のことばかり考えていたのです。
 最近は「まずネットで調べる」という以外の選択肢を思いつくのが面倒にもなっていますし。
 職場でも上司から、こういう、ざっくりとした指示を受けることは少なくないはずです。
 そういうときに、「どういう目的で、ドローンについて調べようとしているのか」を最初に確認しておけば、効率良く、目的に沿った調査ができますよね。
 目の前に問題が出されたとき、「なぜ、この問題が自分に与えられたのか?」あるいは「この問題の本来の目的は何なのか?』と問う習慣を身に着ければ、頭一つくらいは抜きん出ることができるのではなかろうか。というか、僕の周りの「できるヤツ」は、たしかに、そういう「メタ思考」をしていました。
 そもそも、上司のほうだって、あまり考えずにそういう依頼をしていることが多いのですよね。


 この本のなかでは、「メタ思考を意識するための練習問題」のほかに、「アナロジー思考」のトレーニング問題も紹介されています。
 

 一言で表現すれば、アナロジーとは類推、つまり「類似のものから推論する」ことです。要は似ているものから「借りてくる」ということです。


(中略)


 アイデアの豊富さというのは、いかに新しいアイデアを異なる世界から借りてくるかに依存しています。陳腐なアイデアしか出てこない人は、狭い世界や業界の中、あるいはすでにヒットしている類似商品から発想するからです。なるべく目を「遠く」に向け、目に見えないものの類似性を探すことで、いくらでもアイデアは出てきます。


 著者は、アナロジーでは大胆な発想の飛躍が起こせるけれど、厳密な証明を論理的に積み重ねるのには向かない思考法である、という注意もしています。

【演習問題】「信号機」と「特急の停車駅」の共通点は?


 なんらかの「関係性」に着目して考えてください。ここで言う「関係性」とは、二者の間の関係性ではなくて、各々の世界におけるなんらかの関係性(例えば信号機なら、信号機と何かの関係性とか)です。


 うーん、どっちも「止まる」ところ?
 なんて僕は考えていたのですが、著者はこう述べています。

【解説】
 もちろん「正解」はいくつもありますが、アナロジー的な回答は「増えることがあっても減ることはない」(増やすのは簡単だが、減らすのはよほどの覚悟でやらなければできない)ことです。
 徐々に増えていく一方だが、簡単に減ることはないという「構造」(ここでは時系列の関係性)を持ったものは身の回りにたくさんあります。会社のルール、家電の機能、スマホのアプリのアイコンなどもそうですが、このようなものには明らかな規則性が存在しているので、これを知っておけば、仕事の上でも何が起きるのかの予測が簡単にできるようになります。
 このように「構造のメカニズムを把握することで先を読むことができる」というのも、アナロジー思考の大きなメリットと言えます。
 ここで重要なのは、こうした規則性が見つかったときに、それを単なる現象面でとらえるのではなく、「なぜ」そのような法則が成り立つのかを考えてみることです。


 偉大な発見や発明には、このアナロジー思考で生まれたものも多いのです(例として、ニュートンがリンゴが木から落ちるのをみて万有引力を発見した、という話が紹介されています。諸説あるようですけど)。
 
 この本を一冊さらっと読んだだけで、こういう思考法が身につくというわけにはいかないでしょうが、少なくとも「メタ思考を意識する」きっかけになる本だと思います。
 たぶん、こういうことを日常的に考えているかどうかで、一生単位では、大きな差になるはず。
 Kindle unlimitedの読み放題に入っているので、試しにページをめくってみて損はないと思います。


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