琥珀色の戯言

【読書感想】と【映画感想】のブログです。

僕が『信頼の手』を離してしまったこと

 ちょっとだけ「お休み」をいただきました。まあ、今回の「いただいた」というのは、本当に誰かから「もらった」ってわけじゃなくて、「僕が自分自身の判断で勝手に休んだ」ってだけのことなんですけどね。
 転勤があって時間に余裕が無かった(無くなることが予想された)のが最大の理由だったのですが、それ以外にも、僕自身が感じていた「閉塞感」みたいなものが積もって、「プライベート・モード突入」になってしまったのです。あともうひとつ、ちょっと時間が必要なことがあったのですけど。

 しばらく休んでみて感じたのは、「僕の場合は、自分が何かを書こういう意志がないと、人が書いたものを読み流してしまうのだな」ということでした。不思議ですよね、書かなくなっても「読む」ということは全然変わりないはずなのに、自分がそこから何かを引き出そうという「野心」みたいなものがないと、読者として素直に楽しめる一方で、「引っかかり」みたいなものは感じなくなってしまうのです。

 そして、自分で参戦しなくなってみると「ネットで天下国家のことを言い争っている連中なんて、よっぽどヒマなんだな!」とかいう気持ちになることも多かったです。実際に仕事で疲れ果てて「風呂に入って寝るだけ」というユニコーンの『働く男』みたいな状態に自分がなってみると、「ワーキングプア問題を真剣に討議しているネットの人たちって、なんて高等遊民なんだろう!」とか思ったりもしたわけですよこの僕が。

「ネットで毎日偉そうなことばっかり書いていながら、自分の仕事をさぼってるのは、どこのどいつだ〜い?
……アタシだよ!」

って感じなんですけど。
ほんと、世間一般の一生懸命働いている人の感覚からすれば、「ネットで毎日長文を書いている」とかいうだけで、もう「違う世界の人」みたいな感じなのかもしれませんね。

ところで、本当はもうちょっと長く「お休み」する予定だったのですが、結果的には、自分で想定していたよりも早いパブリック復帰になってしまいました。その最大の理由というのは、「愛読してくださっている方々からの『読ませてください!』というメールが山ほど来たから」などということでは全くなくて(実際にそういうリアクションはほんの数件でした。みんな惰性で来ていただけで無くなってもなんとも思わなかった、ということなのか、アイツのことだから、どうせすぐに戻ってくるはず、と予想されていたのかは不明ですが)、僕自身が「申し訳なくなってしまった」からなのです。

何に対して「申し訳ない」と思ったのか?

それは、綿矢りさ風に言えば、「僕が『信頼の手』を離してしまったこと」に対して、なんですよね。
琥珀色の戯言』は、ものすごく人が来たり、みんなに知られているようなブログではありませんが、歴史がそれなりにあるので、いろんなサイト・ブログの方に採りあげていただいたり、リンク先、巡回先に入れていただいたりもしています。プライベート・モードにしているときも、僕はときどきリンク先を見ていたのですけど、そういう形でアクセスしようとしてくれた人に「プライベート・モードです」という表示を見せることには罪悪感がありました。

そして、せっかくこのブログを紹介してくださった方のブログやサイトにデッドリンクを作ってしまうことには、同じブログ・サイト管理人として、「申し訳ない」という気持ちがあったのです。「ブログは公共物だ」なんて大仰なことを言うつもりはないんですけど、「あのレストランは美味しいよ、ぜひ言ってみて!」と紹介された店に行ってみたのに、その店が急に無くなってしまっていれば、信頼が損なわれるのはその店だけではなく、「その店を善意で紹介した人」に対してもなんですよね。

今回は、もともと「閉鎖」しようというつもりじゃなくて、新しい生活が落ち着くまで少し休養するつもりだったのです。
やっぱり、開けてると、書きたくなったり、書けないことがストレスになったりするものなので、自分への戒めのつもりで「プライベート」にしたんですよね。
でもやっぱり、僕はこんなふうに、今まで応援してくれたり、読んでくれていた人たちに「プライベート表示」を見せるなんてことは、やるべきではなかったと思います。書けないのなら、正々堂々と、更新間隔をあければいいだけの話です。傲慢な考えであることは百も承知ですが、もう新しいものは書かない、あるいは書けなくても、過去ログの中には、1年に1人くらいでも、誰かの役に経つエントリがあるかもしれない。
正直言うと、僕がいちばん申し訳ないと感じていたのは、このブログの過去ログに対してなのです。

とりあえず、そんなに長い間じゃないし、世間には「通常更新」でももっと間隔が開いているブログもたくさんあるのだろうけれど、このブログのことをプライベート・モード中もずっと巡回してくださっていた方々や、リンクを切らないで、アンテナから外さないでいてくださった皆様には、謹んで謝罪するとともに、心より御礼申し上げます。
たぶんこの先何年かは、今までのような頻度で更新することや時間をかけて書くことは難しくなると思います。まあ、ブログで年単位の未来の話なんて、あまり意味がないのは御周知でしょうが。

考えようによっては、「時間がないからこそ新しい切り口が生まれる」ことだってあるかもしれないし。

それにしても、ネットというのは本当に不思議なものですね。リアルの僕は職場という環境の変化に戸惑いまくっているのだけれど、ネット上の人間関係は、そんな変化とは関係なく、先月も今月も同じです。たぶん、世界中どこに行っても「昨日と同じ」です。それは、今の僕にとっては、とても大きな「よりどころ」なんですよね。
その一方で、ネットの友人・知人たちは、僕が同じような日常を送っていても、明日突然いなくなって、メッセージひとつ送れなくなってしまう可能性も十分にあるのだけれども。

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