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琥珀色の戯言

【読書感想】【映画感想】のブログです。2016年8月より、『はてなブログ』に移行しました。

スティーブ・ジョブズ 神の交渉力 ☆☆☆☆


iPodを生み出したスティーブ・ジョブズの成功と、挫折もふくめた強烈な生きざまとは? ディズニー、ビル・ゲイツなど、多くの敵を打ち負かしたテクニックを公開。交渉力という切り口からビジネスへの執念を解明する。〔「スティーブ・ジョブズ神の交渉術」(2007年刊)の改題改訂〕

 ジョブズすげえ! でも、真似できるような人じゃないな……

 それが、僕がこの本を読み終えての感想でした。
 この本、書店で見たときは、「ジョブズに学ぶ、ビジネスでの交渉術」が書かれているのではないかと思ったのですが、読みすすめていくにつれて、「ジョブズって凄い、そして酷い! こんな生き方、ジョブズにしかできないだろ、普通の人間には、ほとんど参考にならん!」というのがよくわかりました。
 自分の人生の参考にするというよりは、53歳にしてすでに「分厚い伝記が書ける」ほどの波乱万丈・毀誉褒貶とともに生きてきたスティーブ・ジョブズという人のこれまでの生涯を辿るという意味で、非常に「面白い」本ではあると思うのです。ジョブズの人生を辿っていくと、膵臓がんで命の危機に瀕したことさえも「たくさんの印象的なイベントのうちのひとつ」として読み流してしまうくらいです。
 この本を読んでいると、ジョブズというのは、日本史で言えば織田信長、中国史で言えば曹操のような「先進性と時代を見る目と独善性と冷酷さを併せ持ったリーダー」であり、物語のなかの人物としては魅力的でも、「こういう人が自分の上司だったら、たまらないだろうな……」ということを僕はずっと考えていました。
 部下や同僚の功績をわがもの顔で世界にプレゼンテーションし、無能だと判断した社員は容赦なく切り捨て、契約を無理矢理反故にし、周囲を罵倒し、開発者には過酷なノルマを課す……
 それでも、ジョブズのもとには、次々に有能な人間たちが集まってきます。

 スティーブ・ジョブズの下で働くのは大変なことだ。忠誠と能力が要求され、彼のメガネにかなわないと、あっという間に切り捨てられてしまう。にもかかわらず、なぜ多くの有能な人材がジョブズと働きたがるかと言えば、
(1)ジョブズと一緒なら、どこにもない「ものすごいもの」を生み出せる気がするから
(2)その障害はジョブズがみごとなくらいに取り除いてくれるから
 という二点に集約されるだろう。
 特に(2)の交渉に関しては、不可能に見えれば見えるほど他人任せにしない。みずから乗り出してものにしてくる頼もしさだ。

 僕からすると、「こんな人にはついていけないだろうな……」と思われるジョブズなのですが、そう言われてみると、「本当に優秀な人材」がリーダーに期待することって、この二点だけなのかもしれませんね。
 ジョブズというのは、「万人に愛されるリーダー」ではないけれど、「優秀な人材」にとっては、自分の可能性を引き出してくれる、この上なく魅力的なリーダーなのでしょう、たぶん。
 
 そして、この本を読んで僕がジョブズについて強く感じたことは、彼の「折れない心」でした。
 自分が設立した会社を自分が招いた人物によって追われ、その後のビジネスもうまくいかず……という状況でも、ジョブズジョブズであり続けたのです。これは、「一度成功すること」以上にすごいことなのではないでしょうか。
 ジョブズは、ある雑誌のインタビューで、こんなことを言っています。

 やりがいというのは、会社をつくったり、株式を公開したときにだけ感じるものではないんだ。
 創業は親になることと同じような経験だ。子供が生まれたときはそりゃあメチャメチャうれしい。でも、親としての本当の喜びは、自分の子供とともに人生を歩み、その成長を助けることだと思う。
 ネットブームを見て問題だと思うことは、会社を始める人が多すぎるということじゃなくて、途中でやめてしまう人が多すぎることなんだ。会社経営では、ときには従業員を解雇しなければいけなかったり、つらいことも多い、それはわかるよ。でも、そんなときこそ、自分が何者で、自分の価値がなんであるかがわかるんだ。
 会社を去れば、大金が転がり込むかもしれない。だけど、ひょっとしたら自分の人生でもっと価値あるすばらしい経験をする機会を放棄してたのかもしれないんだ。

 何かをはじめようとする人にとっては、本当に「素晴らしい言葉」だと思います。
 その一方で、ジョブズのこれまでの会社での行状や社員に対する接しかたを考えると、「この人は、自分のこれまでの行状を棚上げにして、よくこんな『素晴らしい言葉』を口にできるなあ……」と、僕は驚いてしまうのです。
 たぶん、そういう「圧倒的な矛盾」こそが、スティーブ・ジョブズの「カリスマ性」なのでしょうね。
 
 しかし、「ジョブズの時代」がこのままずっと続くとは、ちょっと考えにくいような気がするなあ、敵多そうだし……
 

フリードリヒ2世の残酷な探究心


昨日のエントリで書いたフリードリヒ2世には、こんなエピソードがあるそうです。

様々な言語が飛び交うパレルモで育ったフリードリヒ2世は、人は自然には何語を話すのか疑問に思い、生まれたなりの赤子を集めて一切話しかけずに育てたところ、いずれも死んでしまったという。

高校時代に「世界史資料集」に載っていたのを読んで、「なんてひどい話だ……」と思ったのと同時に、「でも、これを『やってみたい』というのは、わからなくもないな」と感じたのをよく覚えています。