琥珀色の戯言

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女子校育ち ☆☆☆


女子校育ち (ちくまプリマー新書)

女子校育ち (ちくまプリマー新書)

内容(「BOOK」データベースより)
女子一〇〇%の濃密ワールドで洗礼を受けた彼女たちは、卒業後も独特のオーラを発し続ける。インタビュー、座談会、同窓会や文化祭潜入などもまじえ、知られざる生態をつまびらかにする。


著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
辛酸 なめ子
1974年東京都千代田区生まれ、埼玉県育ち。漫画家、コラムニスト。祖母、母、妹が全員女子校出身という宿縁の女子校一家に育ち、自然な流れで女子学院中学高校に進学、女子校ライフを満喫する(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

あの辛酸なめ子さんが書いた「女子校」の本!
書店でこの新書を見つけたときは、「こんなのが出たのか」と、ちょっと驚きました。

 オノ・ヨーコ、YOU、酒井順子松任谷由実中村うさぎいとうあさこ……皆、女子校出身者だと思うと何か通じるところがあるような気がします。彼女たちは、おそらく男性よりも女性の目を意識して表現活動している、それ故女性に嫌われにくいのでしょうか。
 以前共学出身の女性が「男性にモテたいというのが仕事の原動力」と言うのを聞いて、ギャップを感じたことがあります。女子校出身者の場合は、男受けよりも、女子にモテたい、嫌われたくない、という意識で言動に注意を払います。中高を女子のなかで過ごせば、どう言えば相手が怒るか、喜ぶか、女性の感情のツボがわかってきます。そつがなく女性からも好感度が高い女子アナは、女子校出身と見て間違いないでしょう。

 ここで挙げられている「女子校出身者」たちの名前をみると、「なるほど!』と頷かずにはいられません。それぞれ「芸風」に違いはあれど、たしかにこのひとたちには、「共通点」があるような気がします。
 そして、著者の辛酸なめ子さん自身もまた、女子校出身であり、このリストに名前が加わっても、たしかに違和感ないですよね。


 残念ながら、ずっと地方都市で生活してきた僕にとっては、この本に出てくるような「有名女子高」は、マンガとサブカル的な知識と妄想のなかにしか存在せず、辛酸さんやアンケートに答えている女子校出身者の話に「そういうものなんだなあ」と感心するばかりなのです。

 僕は全寮制男子校に3年間通っていた経験があるので、「男子校」というのもは、それなりに理解しているつもりなのですが、「女子校」って、想像もつきませんでした。
 でも、これを読んでいると、「男子校」と「女子校」って、正反対のようで同じような「偏り」と「気楽さ」を抱えているという点では似ていて、「共学」のほうが、僕たちにとっては遠い世界だったのかもしれません。
 「女子校」と言っても、この新書に出てくる、フェリスや品川女子のような「名門」と、僕の身近なところにあった「手頃な偏差値の女子校」とでは、全然違うのでしょうけど。

 この新書のなかで紹介されている「女子校事情」にはかなり驚かされました。
 「女子校の掃除事情」という項より。
 辛酸さんによると、女子校は「掃除をしっかりやる学校」と「適当な学校」の二つに分かれるそうなのですが、「しっかりやる学校」では、こんな感じなのだとか。

 そんな辛い仕事を進んで生徒にやらせる女子校があります。「マリアさま いやなことは 私が よろこんで」という嗜虐的な学園標語を掲げている東京純心女子です。「受験前に標語の行間を読めば良かったです。あんなに掃除ばかりやらされるなんて……」と当時を振り返るのは卒業生のIさん。発作的に彼氏の部屋をピカピカにしてしまうことがあるそうで、六年間で刷り込まれた掃除精神は今も息づいています。いたるところに建っているマリア像が、生徒がちゃんと「いやなことをよろこんで」やっているか目を光らせています。中でもきついのはトイレ掃除。週番で回ってくるのですが、終わった後必ずシスターがチェックしに来て、なんと直接便器を手で触るそうです。さらには、「あなたたち、これをなめられるの?」と厳しく追及されることも……。いたいけな中学一年生の女子にとってはショッキングでトラウマになってもおかしくない質問ですが、もっといえばそういうフェチになってしまう危険もはらんでいます。「ゴム手袋を付けても、汚水が中に入ってきてしまうんです。あの気持ち悪い感覚は今でも覚えてますね」とIさんは当時を思い出して眉をひそめました。生徒は素直で掃除をさぼる人は皆無だったとか。しかし高い学費を払わされたうえ掃除までさせられるとは、腑に落ちない感じもします。女子校の便器はサイズが小さいので、はみ出しがちなのですが、もちろんそれも雑巾でふき取らなければなりません。「今でも、家のトイレを掃除している時、シスターの『なめられるの?』という声が頭の中で響くことがあります」と、Iさん。しかし、部屋が汚れるままの身からすると、掃除の習慣は一生の宝物であるように思われ、うらやましいかぎりです。

 トイレ掃除で便器を「なめられるの?」と言われるのは、少女マンガのイジメか金八先生の中だけの話だと思っていたのですが……
 「掃除の習慣」というのは、片付かない人間である僕にとっては、たしかに羨ましい限りではあるのですけど。

 
 あと、この新書では、けっこう赤裸々に「その女子校に対する世間の評価」みたいなものが語られています。
 なかでも、女子校の生徒たちと「遊んでいた」という進学校男子の座談会には、こんな話が出ていました。

――相手の学校の偏差値は気になりますか?


K:周りの評価で、あそこの子とつき合ってるんだ、すごいなー、と言われるのが気になる人もいますね。僕たちはあまりなかったけど。


S:偏差値高いところは本命にせざるを得ないっていうのがあります。


K:そういえば、千葉の女子校で学校側から戒厳令が出たところがあったよね。保護者に向けて、「本校の生徒は周りの男子校から遊びと思われるケースが多いので注意してください」という話があったとか。乱れてるところはすごいね。廊下でおしっこしたり。S学院の子は、学校の窓からスカートを上げてパンツを見せてくれた。あと、A女子で、電球でオ○ニーして中で破裂した子の話を聴いたことがある。


――偏差値や学校の格によって、「本命」か「遊び」かわかれてしまうのは切ないですね。

こういうのを読むと、女子校もラクじゃないな、というか、社会の縮図みたいなものを色濃く反映しているようで、ちょっと気が滅入ってしまいますね。
都会では、こういうのが「普通」なのでしょうか……


男子校出身で、共学出身の女性と結婚した僕にとっては、まさに「未知の世界」である女子校。
この新書を読むと、子どもは男ひとりの僕でさえ、「自分の娘が女子校に行くっていったら、どうしようかな……」と悩んでしまいます。
もちろん、さまざまな「メリット」(「女さばき」が巧くなる、とか……)も紹介されているんですけどね。

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