琥珀色の戯言

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星を継ぐもの ☆☆☆☆


星を継ぐもの (創元SF文庫)

星を継ぐもの (創元SF文庫)

出版社/著者からの内容紹介
星雲賞受賞作】
月面調査員が真紅の宇宙服をまとった死体を発見した。綿密な調査の結果、この死体は何と死後五万年を経過していることがわかった。果たして現生人類とのつながりはいかなるものなのか。やがて木星の衛星ガニメデで地球のものではない宇宙船の残骸が発見された……。ハードSFの新星が一世を風靡した出世作

この『星を継ぐもの』は、1980年日本で翻訳版が出版されました。
「ハードSF」と呼ばれていたこの作品には、科学用語が頻出しており、まだ小学生〜中学生だった僕にとってはかなり敷居が高く、『ログイン』などパソコン雑誌で「名作」の誉れが高かったものの、読みこなすことができず、挫折した経験があります。
今回、「日本での歴代SF作品の人気投票第一位!」というオビに惹かれて購入したのですが、うーん、字が小さいな……などと愚痴りながらも、比較的スムースに読みこなすことができるようになった自分が、少し嬉しくもあり、寂しくもあり。
中学生くらいのときにこの『星を継ぐもの』を読んだときには、書いてあるすべての技術的な内容を「理解」しなけらばならない、という義務感に駆られていたために、行き詰まってしまったのですが、いまは「まあ、なんとなく雰囲気だけ掴めていれば十分だよな」という「流し読みの技術」がかなり身に付いてしまっているようです。
いやまあ、それだけじゃなくて、主人公・ハントがこの事件に関わるきっかけになる「物体の中身を透視できる機械」も「ああ、CTみたいなもんだな」と理解できたように、この30年間の技術の進歩と僕自身のこれまでの人生経験も大きいのだと思います。
そして、そういう変化によって「読みやすくなった」ということは、この作品が、科学技術の未来をかなりきちんと予測していた、とも言えるはずです。


それにしても、この『星を継ぐもの』というのは、戦闘シーンがあるわけでもなく、恋愛ドラマがあるわけでもなく、この「月面調査員が発見した死体は、どこから来たのか?」という謎が「ひとつの仮説として」解かれるまでのプロセスが書かれている「だけ」の作品です。
でも、だからこそ、この作品は面白い。
そして、ここに書かれていることはフィクションなのに、読んでいくちに、自分も「人類の起源の謎」が解かれる瞬間に立ち会っているような気分になってくるのです。


僕はもともと、そんなに熱心なSF読者ではないのですが、これほど壮大な作品というのは、SFの世界でも、そんなに多くはないはずです。
どうせ「フィクション」なら、このくらい派手に、そして、きちんと騙してほしい。


正直、いま読むと、「古くさい、昔のSF」なのではないかと予想していたのですが、読んでみると、古さを忘れて、引き込まれてしまいました。
(翻訳の文章は、やはり、少し堅いかな、という感じもするのですが、この作品には、よく合っているんですよね)


鏡明さんの「解説」には、こんなふうに書かれています。

 この『星を継ぐもの』は、ホーガンの最初の長編だが、彼の特徴がよく出ている。科学や技術について語るときの様子は、まるでオモチャを与えられた子供のように、嬉々としているのが感じられる。そして、ストーリーを語るよりも、アイディアを語ることが、中心になっている。
 そして、それは、ストーリーを中途半端に語るよりも、はるかに素晴らしいものをホーガンの作品に与えている。センス・オブ・ワンダーってやつだ! 

 この解説は、本当に素晴らしいものだと思います。
 SFや小説の世界はどんどん専門的になってきて、ちょっとした「間違い」も、ネットで指摘されるようになってきたけれど、その一方で、この「センス・オブ・ワンダー」が伝わってくる作品というのは、けっして増えてはいないのです。


 いやほんと、「いまの小説って、みんな同じような作品ばっかりで、ディテールの違いしかわからない」という若い本読みたち、そして、昔読もうとして挫折した僕のような大人たちに、ぜひ、挑戦してみてもらいたい作品です。
 でもまあ、やっぱりそれなりに読むのは大変で、続編の『ガニメデの優しい巨人』は、読むのどうしようかな……と考えてしまってもいるんですけどね。

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