琥珀色の戯言

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超実録裏話 ファミマガ ☆☆☆☆


超実録裏話 ファミマガ 創刊26年目に明かされる制作秘話集

超実録裏話 ファミマガ 創刊26年目に明かされる制作秘話集

内容(「BOOK」データベースより)
裏話炸裂、図版満載。ファミコンブームを駆け抜けた、100万部雑誌「ファミマガ」の制作現場ではこんなことが起こっていた!?記事作りの裏に隠された驚き、笑える真実50本を、当時の編集長が赤裸々に告白。当時の記事の再録を交えて1冊の本にまとめた。門外不出の資料、今だから明かせるあのメーカーとのトラブル。読者も業界人も必見の裏話。

ファミマガ』は、1985年7月創刊。
僕が中学生のときに創刊されたんですね。
なんだか、小学生くらいの頃から、読んでいたような気がするんだけどなあ。


この本は、『ファミマガ』の2代目編集長・山本直人さんが、『ファミマガ』の創成期から全盛期を振り返って書かれたものです。
当時の資料も満載で、『ファミ通』と『ファミマガ』『ファミコン必勝本』を欠かさずに読んでいた僕は、懐かしいなあ……と何度も呟いてしまいました。

創刊当時のものすごい売れ行きとか、画面撮影の際の苦労とか、「あの頃、『ファミマガ』はこんなふうにつくられていたのか……」と、すごく感慨深かったですし、大ヒットした『スーパーマリオブラザーズ完全攻略本』(徳間書店)が、山本さん+当時の編集長の4人でつくられ、時給アルバイトと徳間書店の社員によってつくられたということで、書いた人たちへの印税が発生しなかった、という話にも驚かされました。
この本、120万部以上売れたそうで、売上は3億5千万円以上。
徳間書店は、さぞかし儲かったことでしょう。

スーパーマリオブラザーズ』は、「発売直後の売上が芳しくなく、ちょっと不安な空気が編集部に流れていた」そうです。
いまとなっては信じられない話なのですが、思い返してみると、有名アーケードゲームの移植でもなく、派手に宣伝されていたわけでもない『スーパーマリオ』は、たしかに、発売直後はあまり注目されていなかったんですよね。
我が家では、発売直後に購入したのですが、あまり期待していなかった『スーパマリオブラザーズ』というゲームがあまりに面白いので、ものすごく嬉しかったことを覚えています。
いまは、発売前にゲームの評価まで固まってしまっているような時代なので、あのときの感動が、よりいっそう懐かしく思い出されるんですよね。

ちなみに、こんな話も。

 今でこそ「ゲーム攻略」「攻略本」というんは当たり前のように使われているんですが、この言葉、「スーパーマリオブラザーズ完全攻略本」が登場するまで、世の中にはない言葉でした。
 もちろん、ゲームを攻略している雑誌、書籍はスペースインベーダーの昔から存在したのですが、「解法」「クリア法」「〜への道」というようなニュアンスで呼ばれておりました。本を出すにあたっていろいろタイトルを考えるうちに出てきたのが「攻略」という言葉だったのです。
 この「攻略」という言葉、実は軍事用語で「敵の本拠地を攻略する」というふうに使われるもの。結構、仰々しく「難しい」言葉です。しかし「意味はわからなくてもカッコいい」という意見が出て、ならば!と、採用することになりました。これに「完全」をかぶせた。そしてベストセラーになり、一般的な用語となっていったのであります。
 さらにTVゲームが海外へ広がるにつれ、「攻略」という言葉も伝わり、「Walkthrough」という単語=ゲーム「攻略」という形で独り立ち。今では「物事をうまくいかせること」=「攻略する」と一般的な言葉になっていますが、つい最近まで、あまり使わない言葉だったんです。

 いまでは、ゲームの世界だけではなく、日常的に使われるようになった「攻略」ですが、ルーツは『ファミマガ』だったんですね。

 
 この本のクライマックスは、なんといっても、このエピソードでしょう。

「昔、ファミマガという本を作ってまして」と挨拶すると、5割以上の確率で「野球拳の!」と言われます。ゲーム雑誌の歴史の中で、これほどに記憶に残っている記事は珍しいんじゃないかというのが『水晶の龍』のシンシアの野球拳。
 当然、ウソ技なのでありますが、担当者が何時間もかけて描いたグラフィックの見事さ。そしていくつであっても男は男という悲しいサガ。任天堂のハードにそんなソフトが出るわけはない…と、わかってはいても、確かめようと頑張った。

(中略)

 実際にこのウソ技が掲載され、市場にあった『水晶の龍』の在庫が無くなり、書き換えの回数が増えたといわれています。幸いだったのは技のコマンドが単純だったこと。何度やり直しても実現はせず、そのうちウソだと気づきます。しかも内容が内容なんで、問い合わせもできず…。純粋な子供の心はいたく傷つけられたわけでありますな。

 この本には、当時の「ウソ技」の記事が紹介されているのですが、「こんな小さな記事だったのか……」と意外でした。
 ものすごく大々的に紹介されていたような記憶があったのに……
 あれは本当に罪作りな企画だったなあ。
 「ファミコンでそれはさすがに無いだろう」と思いつつも、「もしかしたら……」と期待せずにはいられない中高生男子マインド……

 「あの頃」の記事の転載とエピソードの紹介が主で、そんなにドギツイ「暴露話」は無い本なのですが、当時の『ファミマガ』と同じように、だからこそ、安心して思い出にひたれる一冊です。
 「青春らしい青春なんて無かった」というのが僕の人生におけるコンプレックスなのだけれど、こうして思い返してみると、テレビゲームとマイコンが僕の青春だったんだな、きっと。

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