あらすじ: 同じ職場の医師・高井(浅野忠信)との不倫に傷つき、自殺未遂を図った呼吸器内科医の折井綾乃(草刈民代)。沈んだ日々を送っていた彼女は、重度のぜんそくで入退院を繰り返す江木秦三(役所広司)の優しさに触れて癒やされる。だんだんと距離が近づき、お互いに思いを寄せるようになる二人だったが、江木の症状は悪くなる一方。死期を悟った彼は、もしもの時は延命治療をせずに楽に死なせてほしいと綾乃に強く訴える。それから2か月後、心肺停止状態に陥った江木を前にして、綾乃は彼との約束か、医師としての努めを果たすか、激しく葛藤する。
2012年32本目の映画館での鑑賞作品。
月曜日のレイトショーで、観客は僕も含めて3人でした。
うーん、なんだか久々に「観ていて不快な映画」でした。
『プライベート・ライアン』の冒頭のように残酷なシーンが続くわけでもなく(ひとつだけ、「観ていて居たたまれなくなるシーン」があるのですが、存在意義がよくわからないというか、観客をとてつもなく居たたまれない気分にさせるだけなんじゃないか、という感じでした)、『ツリー・オブ・ライフ』のようにストーリーが難解なわけでもないのですが……
いやほんと観ていて何度も腕時計に目をやりましたし、1時間経過したくらいから「もう観てられないなこれ、席を蹴っ飛ばして帰ろうかな」と悩んだんですよ。
草刈さんと大沢さんが演じた検察官とのやりとりは、緊迫していたというよりは、なんか「どっちもどっちだな」とひたすら暗い気分で観ていたのですが、とりあえず、周防正行監督は、日本の検察制度の問題を、とにかく強く訴えたいんだなあ、ということだけは伝わってきました。
率直に言うと、これを観ているとき、「周防監督、やっちまったなぁ」「男は黙って、『駄作』」と僕の心のなかで、クールポコがちょっと懐かしいネタをやっていたんですよね。
あの「名作メーカー」の周防監督が、なんでこんな隙だらけの映画をつくってしまったんだ?とわけがわからなくて。
でも、観終えてから考えてみると、そういう「隙」って、周防監督はすべて承知の上で、こんなザラザラとした不快な映画を撮って、問題提起をしてみせたのかな、とも思うんですよ。
「人間は、医者も患者も家族も検察官も、ドラマの脚本のように完璧じゃないんだ。だからこそ、そういう現実のなかで、どうしていくか考えなければならないんだ」
うーん、これは僕の好意的な解釈なのかもしれません。
泣ける「尊厳死ラブロマンス」のつもり……ではないと思うんですけどね。
だって、『それでもボクはやってない』でも、主人公が本当にやったかやってないかは、最後まで描かなかった人ですからね、周防監督。
それでも、この映画は、あまりにもツッコミどころが多すぎるのは事実です。
というわけで、以下は久々にネタバレ感想。
その前にひと言、「人間の死をめぐる荘厳なドラマ」を期待してこの映画を観にいくと、本当に腹が立つ可能性が高いので、お気をつけください。
それでは、ネタバレ感想でお会いしましょう。
ただ、この映画の場合、「ネタバレを読む前に、映画を観てください」と言えるほどの「オススメ」ではありませんので念のため。
以下はネタバレ感想です。
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