- 作者: 梅原大吾
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2013/10/01
- メディア: 新書
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Kindle版もあります。
- 作者: 梅原大吾
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2013/10/18
- メディア: Kindle版
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内容(「BOOK」データベースより)
17歳で世界大会に優勝し、「世界で最も長く賞金を稼いでいるプロ・ゲーマー」としてギネスにも認定されている著者が、「勝負」についての考え方を余すところなく綴る。「勝ち続けることと単発の勝ちはどう違うのか」「どうして僕は勝ち続けられるのか、読者がそれぞれの世界で勝ち続けるにはどうすればいいのか」。目先の勝利にこだわらず、成長を続けることで「勝ち続ける自分」を築き上げてきた著者が、自らの経験をもとに明かす「実践的勝負哲学」。
前著『勝ち続ける意志力』が話題となり、「プロゲーマー」の枠にとどまらない活躍をみせている梅原大吾さんの新刊。
僕も楽しみにしていました。
率直に言うと「悪い本ではないけれど、前著『勝ち続ける意志力』と、あんまり変わらないというか、前著を読んでいれば、こちらは読まなくてもいいんじゃないかな……」と思ったんですよね。
それは、梅原さんの考えにブレがないということを示してもいるのですが、読んでいる側とすれば、「お金を出して買った本が、前とあまり代わり映えしない」というのは、けっこう悲しい。
前著に比べると、梅原さんの思考は、より抽象化され、ゲーマー以外にも通じるように「一般化」されているように感じたのですが、それがかえって、「個性のない自己啓発書化」の原因になっているのです。
梅原さんは「ゲーマーの枠におさまりたくない」と考えておられるのでしょうけれど、梅原さんの最大の個性というか、みんなが興味を持つところは「プロゲーマーという珍しい職業と、その地位を維持するために、どんなことに気をつけてきたのか」です。
「ゲームを通じて語ること」に価値があったと僕は思うんですよ。
「ゲーマーとしての具体的な話」を極力封印しているような今回の新書は、僕のような「ゲーム側から、梅原さんに親しみを感じていた人間」にとっては、もう、あっちのほう(ビジネス、とか自己啓発とかのほう)に行っちゃったのか……」という寂しさもあります。
今回も、梅原さんの言葉には、素晴らしいというか、「こういうふうに考えればいいのか!」と思うようなものも、たくさんあるんですけどね。
僕がいう「基礎固め」とか、「基礎をしっかり作ろう」とは、現象としては疑問を持ちながらきわめて地味な作業を繰り返すことだ。この段階では、まだ個性は出しようがない。なぜこの基礎は大切なのか、なぜこうなっているのかを考えながら習得していくプロセスになる。
キーワードは、分解と反復である。しっかり学ぶと決めた以上は、面倒でも一度すべてバラさなければならない。
例えば僕が新しいゲームを習得するにあたって、ある一連の基本的な動作ができないとする。ここで大切なのは、「どうすればいち早く結果を得られるのか?」という発想をなるべくしないことだ。それは一見早そうでいて、実はかえって効率も要領も悪くなるという結果を招く。
大切なのは「自分は何ができないから結果が出せないのか?」という考え方である。
あるプレーができなければ、複雑に組み合わさっているそのプレーを、一つひとつのプロセスに分解することから始める。
ゲームだとわかりにくいから、バスケットボールでのドリブルからシュートの流を例にしてみよう。ドリブルをしながら敵をすり抜け、踏み切ってジャンプしてシュートを放ち、点を取る。この一連の動作ができないという状況において、できない人ほど一連の動作として練習してしまう。
僕なら、すべてをいったん分解する。ドリブル。ドリブルしながらの敵のかわし方。踏み切りのタイミングや体勢。ジャンプ力。シュートの正確さ。
こうして、複雑に見える一連の動作を一度分解するのだ。
この場合、できない一連の動作ができるようになった場合、得られる成果、得たい結論は「点が取れること」だ。
しかし、落とし穴もそこにある。「どうして点が取れないのか?」という、結論だけにスポットを当てた思考に陥りがちなのだ。本当はドリブルの練習が不足しているだけかもしれないのに、そこがわかりにくくなることが多いのだ。
ああ、僕もたしかにこの「ドリブルシュートで、点が取れないとき、一連のプレーを最初から最後まで漫然と練習してしまうタイプ」だなあ。
そして、シュートが入った、入らなかったという結果に振り回されてしまって。結局、自分の本当の問題点を把握できないまま、非効率的な練習を繰り返すのです。
この「できないことのなかで、本当にできていないのは何なのか?」という分解の発想は、すごく勉強になりました。
言われてみれば当たり前のことなのかもしれないけれど、それを意識しながらやっていっている人って、実際はそんなにいないと思うんですよ。
そして、「観察力」についても、こんな話をされています。
何も、すごいことが要求されるわけではない。
あるスーパーに行ったら、いつも別の店で100円で買っているインスタントラーメンが98円で売られていた。2円安く買えることを発見した。それは確かに発見ではあるけれど、しかし変化としては非常に小さいものである。実際問題、2円安く買えてもそれほどお得感はない。
でも、なぜ一方の店は2円安くできるのか、を考えることもできる。何かコストを削っているのか。仕入れの方法に秘密があるのか。セールはどのくらいの頻度とタイミングで行うと効果があるのか。別に正解を求めよということではないし、わからなくてもいい。あれこれ考えを巡らせ、可能性を検討してみるということがエクササイズなのだ。こうした小さな変化に気づく癖をつけておくことが大切だと思う。
ラーメンの値段に限ったことではない。僕たちが当たり前のように毎日を暮らしている街も、一日として同じ日はない。必ず変化があり、積み重なっている。
そこで「2円得した」や「2円くらいじゃ、そんなに変わらないな」で終わってしまうのではなく、その「理由」を少しだけでも、考えてみる。
梅原さんの本当のすごさは、こういう「日々の積み重ね」を常に意識しているところ、なのです。
でも、こういう「日々の積み重ね」って、言葉にする、しないはさておき、結果を残している人の多くは、やっていることなのかもしれません。
この本を読んでいて、いちばん心に残ったのは「負けを悔いない」という、梅原さんの姿勢でした。
高いレベルでの勝負は、紙一重のところで勝負が決まります。
ちょっとした巡り会わせで、勝つこともあれば、負けることもある。
個々の勝負の結果よりも、「自分が成長していくこと」のほうが大切だと、梅原さんは強調しているのです。
大切な家族。仲の良い友達。その他の興味や趣味。まだ出会ってもいない人や分野。そのすべてを差し置いて、運に左右されるような一時の勝負に勝った負けたで、人生の敗者になったような、あるいは二度と復活できないような失敗をしたかのような気分に、どうしてなれるだろうか。
僕は問いたい。敗者になったことをいつまでも悔いている人は、将来他人が、自分の大切な人が同じように敗れた場合も、かつての自分と同じように「敗者」と決めつけるのだろうか。
ああ、本当にそうだよなあ、と。
他の人に対して自分が思うのと同じように、自分に対しても大事な人は考えてくれるはず。
「前著とあまり変わらないのでは……」と書きましたが、テレビゲームに興味がない人にとっては、こちらから梅原さんの思考に触れてみるのも良いかもしれません。
「負けること」から学んで、成長してきた人の話って、面白いんですよね本当に。
こちらが梅原さんの前著。Kindle版もあります。
- 作者: 梅原大吾
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2012/04/02
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勝ち続ける意志力 世界一プロ・ゲーマーの「仕事術」 (小学館101新書)
- 作者: 梅原大吾
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2012/10/26
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