- 作者: 志賀内泰弘
- 出版社/メーカー: PHP研究所
- 発売日: 2014/09/10
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
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Kindle版もあります。
- 作者: 志賀内泰弘
- 出版社/メーカー: PHP研究所
- 発売日: 2014/10/31
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内容紹介
村上春樹の『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』に登場するレクサスのお店は、本書で紹介する「レクサス星ヶ丘」と言われています。村上がこの店をモデルにしたのは、その顧客サービスの徹底したおもてなしの心にあるとも言われています。
ホテルのベルマンのような出で立ちで、お店の前に立つ警備員は、通りをレクサスが走るたびに車に向かいお辞儀をします。毎日続けていると、評判になり、ここでレクサスを買いたいというお客さんが現れました。
これはほんの一例に過ぎません。買ってもらうためではなく、お客様への感謝やもてなしを先行したに過ぎません。
本書はゼロからレクサス店を立ち上げ、「人をもてなす」ことに徹して、販売もCSも日本一と呼ばれるまでになった会社の従業員たち奇跡の物語です。
人生や仕事において、ギブ&ギブの精神がいかに大事か、どうすれば心をつかむ人間関係が築けるかをエピソードを通して紹介した一冊です。
ここまでやる車の販売店があるのか……
店の前をレクサスが通ればお辞儀をする警備員、休日なしで、どんな車の急な修理依頼にも応じてくれる技術者たち、それどころか、ホテルのコンシェルジュのように、レクサスユーザーの相談に答えてくれるスタッフ……
村上春樹さんの『色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年』に登場したのはこの店だとすると、村上さんは、ここを「取材」したのかな、などと思いながら読みました。
「日本一売れているレクサスの販売店」は、どのように顧客を開拓しているのか?
何か、特別な宣伝や広告を行っているのだろうか?
車のセールスというと、誰もが思い浮かぶのは戸別訪問だ。店舗の周辺地域の1軒1軒を「ピンポーン」とドアホンを押して回る。不在なら、イベントのチラシやパンフレット、そして名刺を郵便受けに入れる。かつて自動車のセールスをしていた筆者の友人に話を聞くと、1年に3足も靴を履きつぶしたと言う。また、真夏に高層団地の階段を上り下りしながらしらみ潰しに回った際には、疲労で血尿が出て倒れたと懐かしげに話す。
しかし、この方法は前世紀の遺物に近いものになっている。
現在は、一番のセールスは既存のお客様からの紹介だ。既に顧客になってくださっているのだから、信頼がある。信頼から信頼へと紡いだ関係なら、最初から話が上手く運びやすい。
次は、イベントや展示会をしてお客様にお店に来ていただくことだ。新車発表会や試乗会だけでなく、納涼祭りや地域の子どもたちの写生コンテストの発表会などを企画するところもある。もちろん、これにはチラシの投げ込みや新聞への折り込みが必要になる。
一番のセールスは「既存のお客様からの紹介」なんですね。
このネット時代になっても(というか、ネット時代だからこそ、なのか)、「人脈」「口コミ」というのが重視されているのです。
たしかに、レクサスに乗っている人は、知り合いにも経済力がある人が多そうだし、効率的ではありますよね。
これだけ情報過多な時代では、かえって「人脈」のほうが近道になるのだよなあ。
そういえば、以前、保険のセールスですごい実績をあげている人の本にも、同じように「他のお客様からの紹介が大事」と書かれていました。
名簿がないのだから、とにかくオープン後は、購入いただいたオーナーと会う機会をたくさん作ることを作戦の中心にした。
そのために知恵を絞った。
レクサス星が丘の2軒隣には、星ヶ丘三越がある。その周辺にはいくつもの契約駐車場がある。別の日には、車を停めた後、傘を差して三越まで歩かなければならない。それよりも女性ドライバーは立体駐車場に停めるのが苦手な人が多い。
そして何より、有料である。三越での買い物金額に応じて無料の駐車時間が段階的に変わる。高級住宅地に住むオーナーの奥様が、夕食の総菜を買いに三越へ来るとする。いくらお金持ちとはいえ、滞在時間が長くなれば駐車料金が気になるはずだ。
レクサス星が丘では、そこに目を付けた。
「どうぞ、お買い物の際には、いつでも当店の駐車スペースをご利用ください」
と。平日には奥様が、週末にはオーナーが家族連れでレクサス星が丘に駐車して、三越や周りのブランドショップで買い物をされるお客様が増えていった。
それだけではない。
「お買い物の間に、洗車しておきましょうか」
と声掛けする。もちろん無料だ。機械ではなく、すべて丁寧に手洗いする。
車を購入する際には、普通、価格交渉が当たり前のことになっているが、レクサスは、購入時に一切の値引きをしない。定価通り。しかし、アフターケアなど、サービスが手厚いことが料金の中に含まれているという理解なのだ。
毎週1回、洗車をされるお客様がいる。一年に50回。駐車料金と合わせると、値引き価格を補っても余りあるほど「お値打ち」になる(「お値打ち」とは、名古屋弁で価値があるものが本来の価格よりも安く手に入る「お買い得」の意味)。
一見、損をするように思えるが、ここに重要な戦略が秘されているという。
一日に一人のセールスが10人のオーナーの家を回ることは至難の業である。そもそも、第一線で活躍する人ほど忙しい。こちらから訪問するにもアポを取ることさえたいへんだ。しかし、「無料」ということで、お客様の方から店に来てくれる。直接「会う」ということは、次のビジネスチャンスに繋がるということ。
来店時に、ちょっとしたおしゃべりのついでに「いついつ新車が発売されます」というニュースを伝えることもできる。もし時間があれば、店内でゆっくりとコーヒーを飲んでいただきながら説明することもできる。
この店のサービスは、たしかにすごい。
僕もここでレクサスを買えるようになりたいなあ、と思ってしまうくらいに。
レクサスのオーナーが事故を起こしてしまった際に、星が丘店に連絡すると、スタッフが現場に駆けつけてきてくれて、さまざまなアドバイスをしてくれたそうです。
そのときの対応をみて、事故相手も、「今度車を買い替えるときには、あなたの店でレクサスを買うよ」と言ったのだとか。
ここまでやっている販売店があるのか、と感心する一方で、「レクサスを買えるような経済力のある人って、世の中でこんなに大切にしてもらえるんだなあ……」なんて、溜息をついてしまったのもまた事実。
こんなにサービスをしてもらえるのも、顧客がそれだけお金を落とせる人たちだからだし、レクサスが「売れると儲かる高級車」だからなんですよね……
現在の日本には「貴族」はいないはずですが(池田貴族さんも亡くなられてしまいましたし)、経済力がある人には、こういう世界が広がっているのか、と、あらためて思い知らされました。
「すべての顧客が同じサービスを受けられる」という発想は、「日本人的な幻想」なんだろうけどさ。
レクサスには、こんな機能もあるそうです。
実はそんな時、レクサスにはたいへん頼りになる機能が装備されている。「G-Link」だ。このボタンを操作することで、全国どこにいてもレクサス本部にあるオーナーズデスクに電話が繋がる。
よく、銀行や保険会社のサービスセンターへ電話をかけると、「預金に関するお問い合わせは、7のボタンを」などと録音が再生され、それを何度も繰り返さないと肝心の要件が解決しなくてイライラすることがある。
しかし、このオーナーズデスクは、生の人間が24時間電話に出て対応してくれるという優れもののシステムだ。事故や故障だけでなく、病気になったりケガをしてしまったりした際にも警察や消防署と連携してオーナーをヘルプしてくれる。もちろん、道路の混雑状況、はたまた、映画の上映時間やレストランの予約など、コンシェルジュの役割も果たす。
僕はいままで、レクサスのような「高い車」を買おうと思ったことはなかったのですが、高級車というのは「車という乗り物だけを売っている」わけではないことが理解できました。
自分が買えるかどうかは別として、ね。