- 作者: 吉岡秀子
- 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
- 発売日: 2014/11/07
- メディア: 単行本
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Kindle版もあります。
- 作者: 吉岡秀子
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- 発売日: 2014/11/07
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2010年刊の『砂漠で梨をつくる ローソン改革 2940日』に、
東日本大震災、玉塚元一氏への権限移譲、サントリー移籍をめぐるドキュメントを加えた新装版。
10月1日付でサントリー社長に就き、
「プロ経営者」として歩き始めた新浪剛史氏の足跡をたどる一冊。
新浪剛史さんによる『ローソン』の改革は、テレビ東京のビジネス系テレビ番組などでしばしば採り上げられたこともあり、僕も「あっ、この人知ってる!」という感じでした。
「ビジネスの世界」で生きているわけではない僕にも知られている、腕利きの「プロ経営者」。
この本、コンビニ関係の著書も多い吉岡秀子さんによって書かれたものなのですが、吉岡さんによると、「コンビニ戦争」は、ビジネス雑誌やビジネス系のテレビ番組では「視聴率がとれる、優良コンテンツ」なのだそうです。
やっぱり、身近な存在だし、つねに新しい製品やサービスが出てきて「競争」が行われているから、観る側、利用する側としても面白いのです。
現在ローソンは、全国1万店舗を超え、加盟店のオーナ―やクルーなども入れると20万人以上がローソンファミリーとして働いている。特徴的なことは、FC(フランチャズ)率が99%と業界トップであること、本部に支払うロイヤリティーが店の売上の34〜50%と他チェーンに比べて手厚いほうだということ(最高74%というチェーンもあるそうだ)。
これは、新浪さんがローソンを「再生」していく過程を描いた既存の本に、東日本大震災を経験し、老舗企業・サントリーに移籍するまでを増補したものです。
僕は2010年刊の『砂漠で梨をつくる ローソン改革 2940日』は未読なので、新鮮な気持ちで読めたのですが、既読の方は、気をつけてくださいね。
それにしても、本部へのロイヤリティーが34〜50%で「手厚い」というのは、「看板」がないとやっていけないコンビニとはいえ、そこまで吸い取られてしまうのか……と驚かされます。
新浪さんという経営者は、エネルギッシュで、つねに自己研鑽を忘れず、気性が激しい人のようで、僕自身は、「この人が上司だったら、ちょっと苦手だろうな」という感じがします。要求水準が高そう。
個人的には、新浪さんの「経営」についての話よりも、コンビニ業界の動向とか、新商品開発の裏話、みたいなもののほうを興味深く読みました。
ローソンといえば、鶏の唐揚げ「からあげクン」という人も多い。
カウンター横の什器の中に並ぶ、かわいいキャラクター付きの紙パックに入った一口サイズの唐揚げだ。
企業の顔となる商品は、汚してはいけない。世の中に定着したロングセラーは、売れ続けなければいけない過酷な宿命をもつ。
からあげクンは1986年生まれ。
28年前に産声をあげたこの商品は、当時から現在まで5個入りで税別200円。店内のフライヤーで170度の油で揚げて作る。加盟店にとっては手間のかかるものながら、年間約1億5000万食が売れるオバケ商品ということで、本部も加盟店も「クオリティー維持に手を抜けない」アイテムであることは間違いない。
商品・物流本部ファストフードチームのシニアマネジャー、中村吉伸によると、からあげクンはニチレイのNB(ナショナルブランド)商品で、ローソンが専売契約を躱している店内調理用の唐揚げだ。
実は、ネーミングもニチレイの提案で、当時、はやっていた漫画「かりあげクン」にあやかって「からあげクン」としたという裏話が言い伝えられている。からあげファンには、たまらない通な話だ。
「からあげクン」って、そんなに売れているのか……と。
日本国民全員が、ひとりあたり、1年に1パック以上は食べても、1億5000万食にはなりません。
いまや、元ネタの「かりあげクン」のほうを知らない、という人も、少なくなさそうです。
また、「コンビニスイーツ」についての、こんな話も紹介されています。
「売り切れ続出で、みなさんにご迷惑をおかけし、申しわけありません」
2009年末のある懇親会で、新浪剛史は深々と頭を下げた。トップの頭を下げさせたのは、同年9月に「驚きの商品開発プロジェクト」の一環として販売した「プレミアムロールケーキ」(150円)だ。
専門店やデパ地下で売っている有名パティシエの味に慣れたグルメたちには、「コンビニスイーツ」は人気がない。1店で1日5個売れたら上出来。それが発売当初から生産が追いつかない人気で「1日1店20個までにしてください」と本部が発注制限を出した。3ヵ月で販売1000万個を超える大ヒット。「コンビニでスイーツは売れない」という既成概念を打ち破ったのだ。刺激を受けた同業他社のMDは、ひとりやふたりではない。
いまや、「安くておいしい」というイメージさえある「コンビニスイーツ」も、5年前までは、「まあ、コンビニだからね」という感じで、そんなに期待されていなかったのです。
プレミアムロールケーキは、良質のクリームを使用していたのですが、手で持ち上げるとクリームがこぼれやすい、ということでスプーンで食べることにしたら、「手が汚れない」と女性に喜ばれ、さらにヒットしたそうです。
これを読んでいると、コンビニって、ここまでして「差別化」しようとしているのか、と驚くばかりです。
新浪社長は、生鮮食品を扱ったり、健康志向の店をつくったりと、つねに挑戦を続けてきました。
もちろん、そのすべてがうまくいった、というわけではなく、死屍累々のなかで、結果的には多くの成果を上げてきました。
「人と同じことをやるのが大嫌い」という口癖のとおり、打つ手打つ手がイノベーションだ。軌道に乗せるのに数年かかろうが、経営にトライアル&エラーは当然だと譲らない。戦略はずばり、「セブン-イレブンがやらないことをする」だ。
業界最大手の『セブンイレブン』に対して、『ローソン』が立ち向かっていくための戦略の数々。
これまでずっと、各コンビニチェーンは『セブンイレブン』の後追いをするのが利益をあげるための「必要条件」だと考えてきたのですが、『ローソン』そして、新浪さんは、独自路線に活路を見いだそうとしてきました。
逆にいえば、セブンイレブンは、真似するにしてもしないにしても、常に同業者から意識される「巨大な存在」なのです。
新浪さんという新たな経営者を迎えたサントリーが、これからどうなっていくのか?
そして、ローソンは、この路線で伸び続けることができるのか?
僕はどちらかといえばセブンイレブン派なのですが、これを読んで、ローソンに少し肩入れしたくなりました。
「からあげクン」って、食べるときにはいつも、「そんなに美味しいとは思わないんだけど、なんとなく買ってしまう」のです。
結局、それを何度も何度も繰り返しているのだよなあ。