琥珀色の戯言

【読書感想】と【映画感想】のブログです。

「ロード・オブ・ザ・リング〜二つの塔」


 DVD(しかも、スペシャル・エクステンデット・エディション!)を持っているにもかかわらず、思わず観てしまいました。何度観ても面白い!のは間違いないんだけど、やっぱりこの映画は映画館で観たほうが圧倒的に良いと思う。せめてウチにホームシアターとか大画面テレビがあればなあ…とかなり真剣に考えながら観てました。それにしてもヘルム峡谷の戦いのシーンは、何度観ても涙がでる。とくにエルフの援軍が来るシーンとガンダルフが援軍を連れてくるシーン。だいたい、あの状況での「援軍」というのは、どうみても「一緒に死ぬために来た」のだから。エルフという種族は基本的に長命で、戦死でもしなければ、人間の10倍くらい平気で生きるという設定だから、あの「戦死」のシーンに対する感慨もひとしおなのだけれど、残念ながらそういうのはあえてピーター・ジャクソンは語らない。しかしながら、「指輪」やD&Dダンジョンズ&ドラゴンズ)というテーブルトークRPGに親しんでいる人が多い欧米では、そういうのは「語る必要がない常識」なのかもしれないので、一概に責められないのだけど。まあ、この映画も「ドラクエ前」あるいは「ロードス島戦記前」では、ここまで日本人に受け入れられることはなかったに違いない。
でも、ちょっとあの男の子の吹き替えの声は幼すぎなかったかなあ。悲壮な状況を強調したかったのだろうけど、かえって違和感あり。あと「殺せ!」「殺せ!」というアラゴルンのセリフは、日本人的には「やれ!」とか「倒せ!」くらいにとどめておいたほうが無難だったかもしれない。ファンタジー世界は、けっこうエグイ言葉遣い多し。

 
 そして、この映画に出てくる援軍(ローハンのはぐれ騎士団とか、エントたちとか、「王の帰還」の●●軍団とか)は、みんなものすごく強い、強すぎる。そんなに強いのなら、エントに土下座して助けてもらえないものなのか、とか「王の帰還」では、「その状況でFAにせずに、もう一戦頼めよ」とか、つい考えてしまうのだ。まあ、そうでもないと、どう考えてもあのヘルム峡谷の状況で勝てるわけがないんだけど。

 
 この映画に対し、サウロンイラクのような植え付けを意図していて、プロパガンダ的である、という批判をする人が一部いるという話を聞いたことがあるのだが、それはちょっと謀略史観チックすぎるのではないかなあ、と僕は思う。少なくとも、この映画には「正さ」と同じくらい「醜さ」が描かれているのだし、これが「プロパガンダ」になるとするならば、それはこの物語そのものの責任ではなく、それを利用しようとする人間の責任なのではないだろうか。


 ただ、最後のサムの言葉の「この世には命をかけてでも戦うに足る、すばらしいものがあるんです」という科白には、かのヤン・ウエンリーの「人間は、『命より大切なものがある』と言って戦争をはじめ、『命は何よりも大事だ』と言って戦争を止める」という言葉を思い出したのも事実です。それでも、この映画の世界に入り込んでいるあいだくらいは、「絶対善」に酔わせていただきたい。


 ところで、来年の2月に4時間越えの超大作「王の帰還スペシャル・エクステンデット・エディション」が劇場公開されるそうで、その中には通常の劇場版ではカットされていた(でも、200分もあるんだよ劇場版も)エントたちにボコボコにされたサルマンのその後のシーンなどもあるらしいです。なんかクリストファー・リーさんの契約問題で揉めて入らなかったとか言われていますが。


 P.S.他のダイアリーを読んでいたら、「とにかく長い!」「こんな長いの映画館で観られるわけがない!」なんていう声が多かったのですが、「こんなに長いからこそ、映画館でないと、集中して世界に入りこんで観られない」から、映画館で観るべきだと僕は思っているのです。リアルタイムで劇場で全部観たのはちょっと自慢。


 いや、こういうファンタジーって、「エルフって何それ?作り事じゃん」という人には、どう説明しても受け入れてもらうのは難しいんだけどねえ。

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