琥珀色の戯言

【読書感想】と【映画感想】のブログです。

治療に向かわせる「動機付け」

http://med-legend.com/mt/archives/2005/05/index.html#000677

僕は内科医なのですが、「今は症状も何もないのに、どうして治療するんだ?」ということでドロップアウトしてしまう生活習慣病の患者さんをたくさん診てきています。そして、糖尿病で言えば、それこそ合併症で眼が視えなくなりそうになってから、とか、人工透析寸前になってから「なんとかしてくれ!」と言われて「いまさらムリだよ…」という思いをすることも多くて。
それで、無症状の患者さんに「眼が視えなくなる怖い病気ですよ」とか、半分脅しのような説明をしたりするわけなのですが、やっぱり、人間というやつは、「今どうもないんだから、大丈夫なんじゃない?」とか、考えてしまうものなんですよね。そりゃ、僕だって虫歯だとわかっていても、痛くならなきゃ歯医者に行く気にはなかなかなれないしね。

ただ、こういう患者さんたちは「本人が辛い体験をしてしまう時期」になってしまうと、もう病気としては不可逆的になってしまうのです。だから、「破滅体験によって学ぶ」というのは、医療者サイドとしては、「敗北」なわけで。でも、僕たちの「理屈」は、なかなか受け入れてもらえない。
内科医、とくに生活習慣病とか慢性疾患を診る医者にとっては、「先生はいつも自分たちを脅かすけれど、結局何もなかったじゃないか!」と患者さんに言ってもらうのが、理想の状態なんですよね。

実際に患者さんを治療に向かわせる動機付けというのは、「医者に説明を聞いたから」というよりは、「同じ病気で近所の人が死んだ」とか「みのもんたがテレビで言っていた」とかだったりすることが多いので、結局、体験(他人の体験も含めて)からしか、学べないところもあるのかなあ、という気もしています。
もちろんこういうのは個人差があって、「わかっているはずなのに、なんで酒を飲むんだ…」というようなケースは、枚挙に暇がないわけですけど。

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