- 作者: 木村元彦
- 出版社/メーカー: 集英社インターナショナル
- 発売日: 2005/12
- メディア: 単行本
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昨日当直しながら一気読み。こういう「一晩で読みきってしまいたくなるような本」を読んでいるときが、僕は最高に幸せです。
ユーゴスラビア最後の監督であり、ジェフ市原を強豪に押し上げた名将オシム。政治の波に翻弄されながら、フィールドですべてを語ってきた孤高の哲学者。自分にも他人にも厳しい人なんだけど、その「人を育て、見ていないようでちゃんと見ていてくれる眼」を敬い、感謝するようになっていく選手たち。ビッグクラブで指揮をすることを望まず、「汗をかく」選手を大事にするという視線。サッカーのことが書いてあるんだけれど、人に何かを伝える、伝えなければならない立場の人は、サッカーに興味がなくても一度は読んでもらいたい本です。僕がこういうスポーツ・ノンフィクション好きであることを差し引いても、本当に面白い本でした。やっぱりチームにとっての「監督」っていうのは、本当に大きな存在なのだなあということがあらためてわかったような気がします。
僕が好きだった場面のひとつを挙げておきます。
(優勝がかかった試合で、最後に決定的なシュートを外した佐藤勇人選手へのオシムの言葉)
ミックスゾーンにいた勇人は、悔しくてたまらなかった。そこに記者が話しかけた。
「監督に、最後の佐藤のシュートが残念でしたね、と聞いたんだよ。そうしたら、『シュートは外れる時もある。それよりもあの時間帯に、ボランチがあそこまで走っていたことをなぜ褒めてあげないのか』と言われたよ」
全身が痺れた。この人はどこまでも自分たちを見ていてくれる。その上、選手を横一線で見ているのだ。