琥珀色の戯言

【読書感想】と【映画感想】のブログです。

「はてな」の言論統制

http://d.hatena.ne.jp/kgoutsu/20060504#p4

 正直、↑のエントリを読んだときの第一印象は、「そんな被害妄想チックな…」というもので、そのうち「はてなのルーツはユダヤ人だった!」とか、「はてなを支配しているのはフリーメーソンだった!」なんていう話がどこからか湧き出てくるのではないかと心配になってきたのです。
 実際に「はてな」でけっこう長い間(というか、βテストからのつきあいです)書いている僕自身には、「既得権益」なんて全然無いし、「言論統制」も感じたことはないのですが。

 でも実は、こういう発想って、僕もサイトを始めた5年くらい前の時期には、間違いなく持っていたような記憶があるんですよね。更新しても更新してもほとんど誰も来てくれない閑古鳥サイトを運営していた僕にとっては、当時の「中堅〜大手サイト」というのは、みんな「既得権益を持っている人々」に見えたものでした。
 彼らは、僕がいくら言及しても、あちらからリンクしてくれることはないし、返事をくれるわけでもなく、大手は大手どうしでお互いに言及しあい、たくさんの訪問者を「大手連合」の中で循環させて、新参者を寄せつけないようにしているのではないか、そんな気持ちにもなりました。
 だってさ、大手同士は、「まったく、○○さんったら…」と名前が書かれているだけで何百も人が流れ込んだりするにもかかわらず、零細サイトである僕のほうは、いくら一生懸命書いたところで、誰も読みにきてくれないんだから、やっぱりひねくれてみたくもなるんですよね。なんであいつらばっかり!って。
 僕たちが汗水たらして働いて買った中古の軽自動車の横を、パパのカードで買ってもらった(ように見える)ポルシェが軽やかに追い越していく。ああ、所詮はプロレタリアートなんだよな僕は、と。

 逆に、僕がそういうことをあまり意識しなくなったのは、いつごろからなんだろう?と、今、考えています。そして、意識しなくなったのは、この世界の「階層」に慣れてしまったのか、それとも、僕自身が、いつのまにかその「大手コミュニティ」みたいなものの中に、取り込まれてしまったのか?

以前、個人サイト「大国の興亡」
http://d.hatena.ne.jp/fujipon/20050908
というエントリを書いたのですが、ある程度サイト(ブログ)というのが大きくなると、「小回り」というのは効きにくくなってきます。それは、どちらかというと「既得権益を守る」というより、「より効率の良いほうを選ぶ」という意識のほうが強くなってしまうためだと思うのですが。「新しいサイトの発掘」よりも、「大手どうしの循環」を選んだほうが、はるかにラクで、(短期的には)効果が大きいので。正直、1日10アクセスくらいのサイトからインネンをつけられたとしたら、わざわざ自分のサイトで取り上げて言い返すよりは、放っておいたほうが、はるかに「効率的に」鎮火できるでしょうし。だから、「大手」というのは、基本的に「零細」には冷淡になりがちです。バトルにすら、ならない。まさに、「金持ち喧嘩せず」です。

 確かに「既得権益を持つ側」になってしまったら、「格差」というのは、「持たざる側」が意識せざるをえないほどには感じないことが多いのです。たとえば、日本国内における「国籍による差別」なんていうのは、「日本人」である僕にとって、あまりリアリティがないものなのに、差別される側の人たちは、それを日々つきつけられている。
 たぶんね、多くの「ブログを新しく始めた人」は、こういう「格差」みたいなものを感じて幻滅すると思うのです。それでも、ブログ時代というのは、それなりに更新していれば、本当の「閑古鳥サイト」にはなりにくい時代だとは思うんですけどね。新着サイトの表示とか、キーワードリンクとかもあるから。
 でも、そう言われたところで、不味いものを食べさせられているときに「戦争のときの日本人は…」と説教されても「何言ってやがんだ!」という気分にしかなれないのと同じなんですよね。
 コミュニティっていうのは、多かれ少なかれ、「既得権益」があるものだし、逆に、それがあるからこそ、人はコミュニティを作りたがるのです。しかし、それにしても、「はてな」というツールは、ある意味必要以上に「人格化」されすぎているのかもしれません。他のアメブロとかFC2とかドブログとかは、「そんなの○○らしくない!」なんて言われることは少ないですものね。「遅い!」とか「つながらない!」とか言われるくらいで。
 あと、「はてなブックマーク」というのも、便利な一方で問題を抱えているツールではありそうです。確かに、ブックマークコメントというのが、余計な先入観やプレッシャーをブロガーたちに与えている面も否定はできません。あれに否定的なコメントがたくさん並んでいると、ほんと、「つるし上げられている」ような気分になりますしね。そして、自分の感覚で書いてあることを読み取ろうとする前に、ブックマークコメントで「正しいかどうか」を判断しようとしている人は、けっして少なくなさそうです。ただ、ブックマークコメントをつけている人も、そのコメントを見ている人も、多くは「コアなブロガー」あるいは「インターネットへの興味が強い人」であるのは事実だと思いますし、そういう意味では、ある種の「偏り」はありそうです。あの「ブックマークをしてコメントまで書いている人たち」って、確かに「はてな元老院」みたいな気がするときもあるんだよなあ。

 そして、「新規ユーザーを増やす努力」についてなのですが、これからの「はてな」を考えると、広告に大金を使えるほどの大資本ではなく、ネット関連の雑誌・サイト以外での広報活動が活発だとはいえない「はてな」にとっては、「新しくサイトを始める人」を集めるよりも、「現在のユーザーの囲い込み」とか「ユーザーの口コミによる乗り換え組の獲得」のほうが優先順位が高いような気はしますし、それが経営的には「正解」なのかな、とも思われます。「はてな」はたぶん、WINDOWSではなく、Macを志向しているのではないでしょうか。個々の「はてなユーザー」は、自分たちを「特別なマイノリティ」だと思っていて、その一方で、全体からみれば、そのユーザー数の総計は「商売になるくらいには多くて、そんなに珍しいものではない」という。

 まあ、「はてな」がそんなに特別な存在だと思っているのは、実は、「コアなはてなユーザー」だけなのかもしれませんけどね。現在では「普通のブログ」ですら、「本当に好き勝手書く」というのは、なかなか難しいことではあるのも事実ですし。

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