琥珀色の戯言

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ニシノユキヒコの恋と冒険 ☆☆☆

ニシノユキヒコの恋と冒険 (新潮文庫)

ニシノユキヒコの恋と冒険 (新潮文庫)

この本、新刊として出たときに単行本を買ったのですけど、半分くらい読んで、なんとなくそのままになっていたのです。
それで、今回文庫になったのであらためて読んでみました。

 男一匹ニシノユキヒコの、恋とかなしみの道行きをたどる傑作連作集

とオビには書いてあって、それはまさにその通りなのですが、この連作集の特徴というのは、「ニシノユキヒコ」という人間について、あくまでも「彼と付き合った女性たち(「一度きり」に近い人もいれば、比較的長い間恋人同士だった人もいます)の視点」から描かれているということです。そして、僕がこの作品から受ける印象というのは、実は、この物語における「ニシノユキヒコ」というのは、「愛を引っかける釘」でしかないのだ、ということなんですよね。
解説で、藤野千夜さんが、

 彼女たちの強気な語りの合間にほの見える、隠された気持ち。本当はちゃんと知っていて、自分自身にも隠していたようなこと。いくつかの心残り。未練。誰かと幸せでいたかったという、ただ純粋な願い。なのに自分からその関係を終わらせてしまったこと。本来の夢。苦しみ。失敗……。

と書かれていたのですが、この本は、あくまでも「ニシノユキヒコ」ではなく、「ニシノユキヒコを愛した女性たち」(「愛せなかった」って言っていた女性もいましたが)の物語なのです。

しかし、男としては、率直なところ「自分の彼女がニシノみたいな男の『毒牙』にかかったらたまらんなあ」というような不愉快な気分になることも紛れもない事実で。こういうのは、『イッツ・オンリー・トーク』で、「痴漢」の素晴らしさを力説する女性に対する感情と似ているものなのかもしれません。
10話というのは、やや冗長な感じがして、最後のほうはちょっと飽きてしまったのですが(単行本で半分くらいのところで読み捨ててしまったのも、もしかしたらそのせいかも)、心の奥底をゆっくり、静かに揺さぶられるような、そんな小説です。

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