琥珀色の戯言

【読書感想】【映画感想】のブログです。2016年8月より、『はてなブログ』に移行しました。

ブロークバック・マウンテン ☆☆☆☆

 なんで最初にそうなっちゃうのかが僕にはいまひとつ納得できなかったのだけれど(他に「解消」の手段が無かったから、なの?)、ブロークバックの大自然の素晴らしい映像美も含めて、非常に良質の作品だと思います。正直、最初の30分くらいまでは、居眠りポイント満載ではあったのですが。
 この作品、「カウボーイどうしの禁断の純愛」を描いたものだという評価がされているみたいなのですけど、僕の感想としては、「同性愛のために行き場を失ってしまった二人の物語」というよりは、「人生において『自分の場所』を見つけることができなかったために、昔の甘美な思い出から抜け出せなかった二人の物語」のような気がしてならないのです。彼らは、今の自分に不満を抱えつつも、「日常」(それは妻であり、子供であり、資産であり、立場なのですが)を捨てることができず、にもかかわらず、「こんな日常は、自分が本来存在すべき場所ではない!」とブロークバックでの逢瀬を続けるのです。なんだか、こういう大人ってズルいよね。イニスの奥さんのアルマなんて、一番の被害者のように思えるし。実際、この作品では「世間では偏見が強い同性愛」が題材であるために「純愛」を描いたとみられることが多いようなのですが、同じような「現実にうまくフィットできない自分から逃避するための恋愛、男女間の不倫」なんて、世の中にはゴマンとあるわけで。でも、この作品で描かれている「どうしようもない男たち」は、僕にとってはとてもリアルなものに感じられましたし、だからこそ、本当にせつなくなってしまったのです。誰が悪いわけでもないのに、誰も幸せになれない。「愛情」と「同情」と「惰性」と「逃避」の境界線は、いったいどこにあるのか?
 僕はこの作品を「究極の純愛」だなんて思えないし(田山花袋の『蒲団』みたいだった!)、こいつらは本当に一緒になったら絶対に長続きしない、と感じたのですが、この作品で描かれている「居場所の無い人間の哀しみ」というのは、すごくよくわかるような気がするのです。

 俺たちには、このブロークバック・マウンテンしかないんだ。

 ところが、僕にはその「ブロークバック・マウンテン」すらないのですよね。さて、どっちが幸せなんだ?

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