琥珀色の戯言

【読書感想】【映画感想】のブログです。2016年8月より、『はてなブログ』に移行しました。

フラガール ☆☆☆☆☆

http://www.hula-girl.jp/index2.html

 とにかく、「観てよかった!」と思える映画です。僕が最近すっかり涙もろくなってしまったのは否定できないのですが、後半の1時間くらいは涙が止まらなくて困った。でもね、この映画は、無理矢理「感動させる」「泣かせる」というような作品じゃないんですよね。演出はむしろ抑え気味だし、気のきいたトレンディドラマのような脚本家の自己主張まみれの「名ゼリフ」が続出するわけでもない。ストーリーも、「意外性」はほとんどありません。まさに「王道」。にもかかわらず(だからこそ、なのかもしれませんが)、どうしてこんなに心が動かされてしまうのか。

 映画の基本的な構造としては、「大人版ウォーターボーイズ」「大人版スウィングガールズ」です。素人集団が、苦労しながらさまざまな障害を乗り越えて新しいことに挑戦し、ひとつの「作品」を完成させる、というもの。ただ、この『フラガール』の世界には、高校生の男子シンクロやジャズの「失敗を恐れない青春の明るさ」とは対極にある、「なんとかして生きていかなくてはならない、生活者としての苦悩」があるのです。僕も映画を観ながら「わざわざ素人の炭鉱の娘たちを鍛えるより、プロのダンサーを呼べばいいのに」と思ったのですけど、たぶん、この「ハワイアンセンター」が40年も続いてきたのは、そういう「ラクな選択」ができずに、「地元の人たちと共生する」しかなかったからなんですよね。
 現代の僕からすれば、「東北にハワイを!」なんてバカバカしいとしか思えないし、九州からだと、ヘタすれば本物のハワイに行ったほうが安くつくくらいなのですけど、そういえば、僕が子供のころ、今から30年くらい前のクイズ番組での「豪華商品」の代名詞が「ハワイ旅行」でした。もちろん、この「常磐ハワイアンセンター」が成功したのは、豊富な温泉(炭鉱の仕事には邪魔で、以前はくみ上げて捨てるのにかなりお金がかかっていたらしいです)とリゾート事業立ち上げのタイミングに恵まれたという面もあったのでしょう。これはあくまでも「幸運な成功例」であって、僕が知る限り、この手の地方の事業の多くが「大失敗」という結果に終わっています。この『フラガール』の陰には、同じように努力したけれどもうまくいかなかった「地域再生事業」の墓標が並んでいるのです。

 それにしても、松雪泰子さんと蒼井優さんと冨司純子さんの素晴らしい存在感(そして、松雪さんと蒼井さんのダンス!)が無ければ、この映画はここまで高い評価を得られなかったと思います。わずか2ヶ月のトレーニングで彼女たちはあのダンスの練習をしたそうなのですけど、僕は逆に「じゃあ、本物のプロのフラダンサーの踊りっていうのは、どんなに凄いものなのだろう?」と観てみたくなりました。今までは、リゾート地でのああいうショーなんて、「なんかやってるけど観るのめんどくさいなあ」なんてずっと雑音のようにしか思っていなかったんだけどさ。
 この映画、観終わって考えてみると、冨司さんと松雪さんと蒼井さんという3人の女性の「世代による価値観の闘争」でもあるのです。ひたすら「男を立てて家を守ることを金科玉条とした世代」から、「自立した女性として生きようと、社会のなかで葛藤する世代」、そして、「そういう葛藤からも解放されて、自然にやりたいことをやろうとする世代」。でも、彼女たちは一緒にいることによって、「進歩」していくというよりは、お互いの良いところに感化されていくのです。
 あと、僕はずっと「友達の有名人を自慢する心理」というのが理解不能だったのですが(所詮他人だろ、とバカバカしく思ったりして)、この映画を観て、そんなふうに「誰か」に自分の夢を預けていく人生というのもあるのかな、と少しわかったような気がしました。

 書きたいことはまだまだたくさんあるのですけど、とにかく素晴らしい映画なので、出演者のダンスの素晴らしさを体験するためにも、ぜひ映画館で観ていただきたいと思います。

 いくつか、この映画関連で興味深かったサイト、記事を挙げておきます。
常磐ハワイアンセンターの歴史」
http://www.hawaiians.co.jp/guide/history/index.html


ダンス教師「平山まどか」のモデルとなった、カレイニナ早川さんのインタビュー
http://mytown.asahi.com/fukushima/news.php?k_id=07000120610100001
実在の人物がモデルだったということに、正直驚きました。
御本人によると、

 私は、あんな大酒飲みじゃありません。私の経歴やダンサー1期生たちの役どころも少し違いますし……。指導は時に厳しかったせいか、教え子たちはレッスンの様子は似ていると言います

ということだそうです。そのあとの早川さんの話を読んでいると、指導は「かなり厳しかった」みたいですけど。


「平山まどか」役の松雪泰子さんへのインタビュー
http://movies.yahoo.co.jp/interview/200609/interview_20060918001.html

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