琥珀色の戯言

【読書感想】【映画感想】のブログです。2016年8月より、『はてなブログ』に移行しました。

かもめ食堂 ☆☆☆☆

かもめ食堂 [DVD]

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サチエ(小林聡美)はヘルシンキで“かもめ食堂”を始めたものの客はゼロ。ある日彼女は最初の客で日本かぶれの青年トンミ(ヤルッコ・ニエミ)にガッチャマンの歌詞を教えてくれと言われるが、出だししか思い出せない。彼女は偶然本屋でミドリ(片桐はいり)を見かけ……。 (シネマトゥデイ

 派手さは全然ないんですけど、僕にとっては非常に心地よい作品でした。「よくこんな何も起こらない映画をとれたなあ」と感心してしまいます。正直、こんな流行らない食堂はすぐ潰れるんじゃないか?とか、なんて殿様商売っぷりなんだ!とか、フィンランドの人は食堂でコーヒーしか飲まないのか?なんていう疑問が湧いてこなくもないのですが、そんなことがあんまり気にならないくらいのゆったりとした世界観に浸ってしまうというか、「まあ、こういうのもアリだよね」と納得してしまうんですよね、なぜか。
 それにしても、小林聡美さんというのは素晴らしく存在感がある、凛として立っている人だなあ、と観ながらずっと感動していました。たぶん、小林さん以外に「サチエ」を演じられる女優さんって、いないんじゃなだろうか。立ち姿や所作、セリフの音感がすごく綺麗なんですよね、小林さんって。実際はミドリさんやマサコさんのほうがはるかに「常識の人」なのに、観ているとサチエさんのほうに感情移入していってしまいます。「主役」としては華がないかな、なんて思っていたのだけど、華はなくても実は十分。
 そして、この作品を観ながら僕がいちばん心地よく感じられたのが、この映画の中では、物事の「理由」をいちいち問われない、ということなんですよね。「なんでココに来たの?」「なんでココにいるの?」映画やドラマって、そこに「驚愕の理由」みたいなのをつけたがるじゃないですか、そして、登場人物は、お互いの「事情」を詮索しあう。でも、この「かもめ食堂」って、「でも、あなたはいまココにこうしているんだから、別にそれでいいんじゃない?」という空気に溢れているのです、もちろんそれは永続的なものではないし、「かもめ食堂」だって、お客が多くなればなったで、営業方針の転換を迫られることにはなるでしょう。多くの「行列ができる店」が辿ってきた「効率化」をめざさなくてはならない日も遠くないかもしれません。それでも、この「少しずつ伝わっていくプロセス」というのは、とても幸福な時間なのですよね。そして、将来どうなったとしても、この時間は宝物。
 これを書いていて、そういうのってサイトやブログでも同じだよなあ、と感じました。「試行錯誤してもお客さんがなかなか来てくれない時期」っていうのは、いちばん辛いようで、後から思い出すといちばん楽しい時期のような気もするんですよね。

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