琥珀色の戯言

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天国はまだ遠く ☆☆☆

天国はまだ遠く (新潮文庫)

天国はまだ遠く (新潮文庫)

 僕が瀬尾まいこさんの著作を読んだときにいつも感じることを一言でいえば、「ヌルイな」なんですよね。この『天国はまだ遠く』というのは、都会での生活で消耗しきって、死を選ぼうとまでした若い女性が、田舎で癒されて「再生」する、という物語なのですけど、読んでいて、「この人、本気で『死にたい』のではないんだろうな」としか思えないのです。言っちゃ悪いけど、「わたし」がやろうとしてたのは、所詮「自殺ごっこ」なのではないかと。せめて、『完全自殺マニュアル』くらい読んでおくべきかと(僕は自殺を薦めているわけではないので念のため)。
 ただ、僕はこのくらいの「ぬるい癒し小説」を必要としている人がたくさんいる、というのもよくわかるのです。ちょっと人生に疲れたくらいの女性が読んで、「そうそう」と頷いてほっこりできるような、そんなお話で「救われる」人って、けっして少なくないのでしょう。僕は正直、このあまりに「予定調和的」な内容に、なんだか拍子抜けしてしまったのですけど。

 しかし、この本の「あとがき」の瀬尾さんの言葉を読んでいると、瀬尾さんというのは本当に真面目で質朴な人なのだろうなあ、という気がします。少なくとも人間的には好感が持てそうな人だし、そういう「善意」みたいなのが伝わってくる作品であることは間違いありません。「学校の先生である」というのは、瀬尾さんにとっては、「よりどころ」であるのと同時に、「作品を書く上での足枷」になってしまっているのかもしれませんが。
 世間というのは、「中学校の先生」がエロ小説とか不倫話とかを書くことに対しては、かなり抵抗があるでしょうしねえ……

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