琥珀色の戯言

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「人生経験が豊かな人」という嘘


「山あり谷なしの人生も、山なし谷なしの人生も。」(by われ思ふ ゆえに… (11/7))
http://www.enpitu.ne.jp/usr10/bin/day?id=103512&pg=20061117
↑を読んで。

森博嗣さんが、以前、こんなことを書かれていました。

経験できるのは、僅かに自分の人生一回だけだ。他人の人生も、自分の別の人生も、無理。人生経験が豊かな人というのは、基本的に嘘である。  「僕の夢 君の思考」(PHP文庫)

参照:「人生経験が豊かな人というのは、基本的に嘘である。」
http://www.enpitu.ne.jp/usr6/bin/day?id=60769&pg=20050711

僕は10代、20代くらいまで、自分の人生があまりに平凡で、「人生経験が乏しいこと」に、すごくコンプレックスを抱いていました。夢に向かって貧乏生活に耐えたりしたことも、バックパッカーとして世界一周をしたことも、周囲に反対されながら大恋愛をしたことも、二股をかけたりかけられたり、ゆきずりの相手と寝たりしたこともない、そんな「つまらない人生」を送ってきていたので。
勉強、部活、勉強、試験、就職、ちょっとした失恋、ずっと同じ恋人、以上。

でも、この年になって思うのは、この「つまらない人生」のなかにも僕なりの波乱万丈はあったし、きっとこのくらいが、僕の選んだ人生ってヤツなのだろうな、ということなのです。というか、経験しなくて良いことは無理して経験する必要もないし、僕には「恋愛経験」を積むための気乗りしない恋愛なんてする必要がなかった、ただ、それだけのことなのだな、と。
いわゆる「波乱万丈系の人生経験」というのが人を豊かにするかというと、必ずしもそうではないと僕は感じます。テレビに出ている「成功者」たちは、それをバネにして頑張ってきたのかもしれないけれど、大部分の人は、そういう「経験」を生かせていないどころか、同じような間違いを延々と繰り返しているだけです。「人生経験豊富な人」のアドバイスって、「オレの経験によると……」という「経験論」に偏りすぎてしまって、アドバイスを受ける相手のことが全然見えていなかったりしがちですしね。もちろん、冠婚葬祭の手順とか社会的儀礼みたいなものには「経験」って大事だな、と思うことが多いし、ひとつの「参考意見」としては、「実体験している人」の話は重要なのですけど。
10年間に10人の女性とつきあったからといって、「女性っていうのはな……」なんて語り始めるような「人生経験豊富な人」よりも、10年間同じ人とつきあい続けて「いや、女性のことは全然わからなくって……」って苦笑している人のほうが、僕は好きです。
「別れる」のが選択なら、「別れない」のもひとつの選択なのだしね。

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