琥珀色の戯言

【読書感想】と【映画感想】のブログです。

この胸いっぱいの愛を ☆☆☆

2006年。子どもの頃に過ごした北九州に、出張で向かった比呂志は、自分が1986年にタイムスリップしていることに気づく。同じ飛行機に乗り合わせたヤクザの布川、影の薄い男・臼井、盲目の老婦人・朋恵も同様にタイムスリップしていた。旅館を営む祖母に預けられていた20年前のその日、自分が火事を起こしていたことを思い出した彼は、旅館の台所に駆け込み、間一髪のところで火を消し止める。このことをきっかけに、20年前の自分自身“ヒロ”と同じ部屋に居候することになる比呂志。旅館に住むことは、ずっと忘れられない初恋の人“和美姉ちゃん”との再会も意味していた。

「もしも、過去にタイムスリップし、ひとつだけやり直すことができるのなら、愛する人を救えるかもしれない……」。興行収入30億円を超える大ヒットを記録した『黄泉がえり』の原作者でもある梶尾真治の中編小説「クロノス・ジョウンターの伝説」を基に、塩田明彦らが脚色したファンタジー・ドラマ。主演に伊藤英明ミムラ

 僕はこの手の「泣かせ映画」は嫌いなのですけど、主演のミムラさんと指揮者・金聖響さんの結婚のきっかけとなったというのに興味があって観てみたのです。しかしこの映画って、「タイムスリップ」「子供」「難病」「音楽」「母親」「犬」などの超協力「泣かせコンボ」があまりにあざとすぎて、僕にとっては「で、この映画、どこで泣けばいいの?」って逆にしらけてしまったんですけどね。さすがに、あんまりしつこく泣け泣け言われると、かえって引いちゃうよ。主演が伊藤英明ミムラというのも、なんだか「うーん、2軍オールスターみたい」という印象を際立たせています。どうしても「本当は宮崎あおいとか竹内結子とか柴咲コウを使いたかったんじゃないかな……」とか邪推してしまいます。『黄泉がえり』の「安い二番煎じ」っぽさ炸裂。興行収入も約10億円と『黄泉がえり』の3分の1。まさに縮小再生産。
 そもそも、ストーリーが破綻しまくっているし、感情移入できるポイントも少ないですしね。あの状態の人に『世の中には生きたくてもきられない人もいるんだ!』とか言うのは、あまりにも残酷ではないかね。未来も都合のいいところだけ変わってるしね。ドラえもんの第1回の「飛行機でも新幹線でも、結局は大阪に着くのは同じ理論」なのか?
 とまあ、文句ばっかり書いたんですけど、「ちょっとお金をかけてキャストに凝ったテレビの2時間ドラマ」と考えれば、レンタルで借りて観たりテレビ放映されているのを眺めたりするのには、そんなに悪くない作品だとも思います。伊藤英明さんもミムラさんも上手いんですよねほんと。でも、ミムラさんって鳴り物入りで「月9」でデビュー後、かなり多くの作品に出ていて、けっしてルックスも演技も悪くないはずなのに、なんだか華がないというか、「これがミムラの代表作!」という作品に恵まれないまま、このまま結婚してフェードアウトしていきそう。そういう「ミムラさんの印象」というのは、『この胸いっぱいの愛を』への僕の印象そのものなのです。
 それにしても、最近の映画って、「泣けるかどうか」で評価されている作品が多くて、僕はそれがとても残念です。なんだか、「泣かせるための方程式」にあてはめて作っただけの作品があまりに多くて、似たような内容の作品ばかりになってしまっているようで。こういう「ゾンビ映画」が増殖している一方で、「死んだ人は、ただ無になるだけ」という世界観を貫いた『DEATH NOTE』が大ヒットしているというのは、もう、安易でワンパターンな「泣ける映画」に飽きてきた人もたくさんいるのだ、ということではないかと。
 そうそう、主題歌の柴咲コウの"Sweet Mom"は好き。柴咲さんの歌って、なんだかとてもしみじみしてしまうのですが、その中でも名曲だと思います。

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