琥珀色の戯言

【読書感想】と【映画感想】のブログです。

雪沼とその周辺 ☆☆☆☆

雪沼とその周辺

雪沼とその周辺

 谷崎潤一郎賞受賞の短編集(ちなみに、川端康成文学賞受賞の短編も含まれています。同じ作品にあげなければならないほど、資源は枯渇しているのか?)。「文学賞メッタ斬り!リターンズ」で高く評価されていたので読んでみたのですが、なんというか、「短編小説のお手本」みたいな作品集だなあ、と思いました。「雪沼」という寂れつつある街で生活する、さまざまな職業の人々の心の風景を切り取った作品なのですが、読んでいてとにかくしみじみと「『ごく平凡』なように見える人でも、心のなかには、たくさんの『記憶』が積み重ねられているのだな」と感じさせられます。まさに「最高の佳作」。どの話も「最後まで語りつくしている」わけではなくて、「えっ、ここで終わり?」というようなところで途切れていたり(もちろんそれは意図的なものなのですが)、そんなにドラマティックなことが起こらない話が大部分であったりするので、「起伏の激しい読書体験」を求める人には向かないと思われますが、最近の「泣かせるためだけの本」に嫌気がさしてしまっている本読みの皆様には、とても心地よい本としてオススメできます。
でも、このページ数でこの値段(1400円)は、ちょっと割高感がありますね。最近の僕は、正直、「面白ければ薄い本ほど偉い」と考えてしまう傾向はあるのですが、それにしても、ねえ。

文学賞メッタ斬り!リターンズ

文学賞メッタ斬り!リターンズ

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