琥珀色の戯言

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Flashの未来とYouTubeの現在

かーずSP選FLASH大全 (VOL.01) ☆☆☆☆

かーずSP選FLASH大全 (VOL.01) (INFOREST MOOK―PC・GIGA特別集中講座)

かーずSP選FLASH大全 (VOL.01) (INFOREST MOOK―PC・GIGA特別集中講座)

かーずさん自身による紹介文
http://hw001.gate01.com/karzu/column/karzuspflashtaizen01.html

 どちらかというと「面白い!」というより「懐かしい」「こんなのあったなあ……」と感傷的になってしまうところが大きいのですが、この値段で厳選された「Flash文化」を手元に置いておけるというのは、非常にお得な感じがします。製作者コメントがついているというのも興味深いですし。僕がリアルタイムで見たのって、このなかの本当にごく一部なんですけど、なんだかその当時の自分の私生活のこととか、ネットでの出来事、接続環境とかを思い出してしまうのです。

 ところで、今この本が「大全」として発売されたのには、ある種の「転換期」であることを感じずにはいられないんですよね。
この職人さんたちが作った「Flash」の手作り感というのは、まさに、マイコンが出始めたとき、市販のゲームソフトはほとんどなく(あるいは高価で買えず)、コンピューター好きたちが一生懸命ゲームを自作し、そのプログラムリストを『I/O』とか『マイコンBASICマガジン』とかに公開していた時代の「マイコンゲーム」を彷彿とさせるものです。あの頃は、ひとりの才能でメーカー製のゲームに太刀打ちできる可能性が十分にあったし、リストを打ち込みながら、「いつかは自分が人気ゲームを作ってやる!」と多くのマイコン好きたちは考えていたものでした。製作者とユーザーの垣根は非常に低いように思われたのです。
 しかしながら、時代とともに、ゲームはどんどん「大型化」していき、いまや「ひとりでゲームを作る」というのは難しい時代になりました。いや、物理的には不可能ではないんだけれども、そういう「ひとりでつくったゲーム」を遊んでくれる人、喜んでくれる人というのは、ほとんどいなくなってしまったのです。だって、プレステの人気ゲームでも、ちょっと古い作品だったり中古で買ったりすれば、千円くらいでかなりの人気タイトルが買えますしね。
 いまやネット界を席捲している「YouTube」によって、Flashというネット文化は、大きな岐路に立たされています。YouTubeでそれが流されることの「合法性」には議論があるものの、正直、映像のプロが作ったテレビ番組や映像作品が無料で観られるようになってくると、Flashは、「一部の好事家だけが愉しむもの」と化してしまうのではないかと僕は危惧しているのです。マイコンの自作ゲームに郷愁を感じつつも、結局、自分がプログラムリストを入力しなくなってしまったように。あまり細かい絵は動かせないとか、使える音楽が限られている(というか、いわゆる市販の音楽はほとんど使えない)という制約をクリアして面白くみせるのは、Flashという「文化」が生んだ、職人芸なんですよね。そして、その「壁」を越えようとする才能と熱意に、僕たちは魅了されていたのです。でも、YouTubeには、その「壁」そのものが存在しない。今後、著作権が問題化する可能性は高いのですけど、現実的にすべてのYouTubeの映像を検閲することは難しいでしょうし。

http://d.hatena.ne.jp/keiichirohirano/20061206/1165423427
↑で平野啓一郎さんは、

 新しい技術が登場すると、それ以前に、その分野で行われていたことが、本来はその新技術でこそなされるべきだったというような一種の錯覚的な発見をするものです。自動車を組み立てるような工業用ロボットが登場すると、それが担うことになったような単調な労働は、本来的に人間ではなく、ロボットのなすべき仕事だったという感じがしてきます。もちろん、現実にはその逆で、人間がやっていたことをロボットが取って代わったのですが。
 その意味では、Youtube以前に、本来Youtubeがやるべきであったようなことを、無理矢理テレビでやってたというような試みが幾つか思いつきますね。

 と書いておられます。
 僕は「職人さんの顔」が見えるFlashという文化が大好きなのですが、この文化は、マイコン初期の自作ゲームのように「過渡期の文化」になってしまうのかなあ、と、ちょっと寂しくも感じているのです。

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