琥珀色の戯言

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村上春樹イエローページ(2) ☆☆☆

村上春樹 イエローページ〈2〉 (幻冬舎文庫)

村上春樹 イエローページ〈2〉 (幻冬舎文庫)

村上春樹イエローページ」(1)(感想は、http://d.hatena.ne.jp/fujipon/20060904#p2)の第二弾、というか、もともとは1冊の本だったのが、文庫化に際して2冊に分冊されただけなんですけどね。
この(2)では、『ノルウェイの森』『ダンス・ダンス・ダンス』『国境の南、太陽の西』『ねじまき鳥クロニクル』の4作品について解説されているのですが、僕の感想としては、やっぱり学者とか文芸評論家というのは、こんなに難しい言葉を駆使しなくてはならないのかなあ、ということでした。ふつうの読者にとっては、これを読んで「わかったような気分」になるより、作品を読んで自分で思ったイメージみたいなもののほうが、よっぽど大切なのではないでしょうか。
でも、

 彼がいまコミットメントと言うなら、それはそのことを通り抜けた言葉になっているのでないといけない。デタッチメントではなくてコミットメント、ではなく、デタッチメントがコミットメントであること、コミットメントだったことにいま気づいた、という言い方こそが、彼にはふさわしい、という気がする。

なんていう文章が並んでいると、こういうのがわかる人には「イエローページ」は要らないんじゃないの?とか、つい考えてしまうわけです。もちろん「文脈」というのもありますし、読んでいればそれなりにはわかったような気分になれるので、ここだけ抜き出して「こんなのわかるか!」って言い放つのはアンフェアだと僕も思いますが、正直全体的に使われている言葉や表現が難しい印象が強いです。
 (1)のほうでは、村上作品が世に出たときの世間の反応やその時代の村上さんの発言などがけっこう引用されていて、村上春樹ファンとしては、それを読むだけでけっこう楽しめたのですが、今回はそういう「資料的側面」が少なかったのも残念です。この本で取り上げられている4作品のうち、『ダンス・ダンス・ダンス』以外の3作は、いずれも大好きで何度も読み返していて記憶にも新しい作品だったのでなおさら。
 ところで、この本、巻末の内田樹さんの「解説」がすごく秀逸なんですよね。本文よりも、この「解説」に僕は唸らされました。

 村上春樹はその小説の最初から最後まで、死者が欠性的な仕方で生者の生き方を支配することについて、ただそれだけを書き続けてきた。それ以外の主題を選んだことがないという過剰なまでの節度(というものがあるのだ)が村上文学の純度を高め、それが彼の文学の世界性を担保している。

 村上春樹ファンには、この内田さんの「解説」のほうをぜひ御一読いただきたいと思います。

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