琥珀色の戯言

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第136回直木賞「受賞作なし」の舞台裏

http://www.asahi.com/culture/update/0116/018.html

 該当作なしの直木賞については、同賞選考委員の阿刀田高氏が「最後に残った池井戸潤さんの『空飛ぶタイヤ』と三崎亜記さんの『失われた町』の2作品に、それぞれ強い賛否の意見があった。これまでの直木賞の水準から見て、候補作が特に劣っていたわけではなかった」と説明した。

 こういうのを読むと、文学賞を獲るというのもけっこう「運」の要素がありそうだなあ、と思います。そりゃあもう、「圧倒的な支持」を受ける作品だってあるのでしょうけど。
 第135回の芥川賞受賞作『八月の路上に捨てる』に関して、宮本輝さんが選考委員コメントのなかで、

宮本輝

「選考会の蓋をあけてみると、伊藤たかみ氏の『八月の路上に捨てる』を二人の委員が強く推し、他の委員も全否定の票は入れなかった。○△×で区別すると、二人が○で、他はほとんど△である」

 と、その「評価」を公開しておられるのですが、要するに「8人のうち2人が絶賛、あとの6人は積極的に推すほどではないが、授賞に反対するほどでもない」という程度の評価でも、「獲れるときには獲れる」のです。

 逆に、『空飛ぶタイヤ』と『失われた町』は、もしかしたら、「○が4人で△2人、×2人」というような評価だったのかもしれないんですよね。『空飛ぶタイヤ』は、某三菱自動車の不祥事を題材にした小説で(確かに、そういう小説に大きな賞をあげるのは、いろいろ逡巡があるのかもしれません。そういうのが「文学」なんだろ?という人もいそうですが)、『失われた町』は、「SF」ですから、作品としての面白さとか評価はさておき「この作品はダメ!」って言う人がいたために、高評価の人が多くてもダメだった可能性もありそうです。
 僕自身は、「大部分の人が△の小説」よりは、「ハマれば◎、ダメなら×」な小説のほうに魅力を感じるんですけどね。

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