琥珀色の戯言

【読書感想】と【映画感想】のブログです。

ハチミツとクローバー ☆☆☆☆

美大に通う男女5人を中心に、甘酸っぱい恋と青春の物語が展開する。主人公・竹本を演じるのは人気グループ「嵐」櫻井翔。そのほか、『雪に願うこと』の伊勢谷友介、『花とアリス』の蒼井優、『花よりもなほ』の加瀬亮、『八月のクリスマス』の関めぐみがメインキャストに名を連ねている。スピッツスガシカオがそれぞれ書き下ろした主題歌とエンディング曲も話題。

美大に通う竹本(櫻井翔)は、ある日、一心不乱に絵を描く少女・はぐみ(蒼井優)に恋心を抱く。彼女は大学の教授・花本(堺雅人)の親戚で、天才少女とうわさされる転入生だった。はぐみのことが頭から離れない竹本だったが、彼と同様にはぐみを気にかける非凡な先輩・森田(伊勢谷友介)の存在が竹本の恋心をかき乱し……。

 最初にお断りしておきますが、僕は原作は全然読んだことがないので、原作との比較はできません。

 『フラガール』での熱演も記憶に新しい蒼井優さんが出ているということもあり、この『ハチクロ』を観てみたのですが、観終わって痛切に感じたことは、「ああ、やっぱり『ナチュラル・ボーン・アーティスト』には勝てないよな……」ということでした。僕は芸術家に憧れてしまう普通の人間なので、竹本がはぐみに魅かれて近づけば近づくほど「棲む世界が違う」ことが浮き彫りになっていくのを観て、なんだかとても哀しくなってしまったのです。「甘酸っぱい」っていうよりは、もう「ひたすら苦い」という感じでした。いや、飲み会とかボロ車で海に行っちゃう場面とかは、「そういえば僕も大学時代にこんなふうに海に行ったことがあったよな」って思い出して、ちょっと懐かしくなりましたけど。
 それにしても、僕はこの作品の世界に、「才能のある2人(はぐみと森田)」と、高校くらいまで「絵が上手い」って周りから言われていたのに美大に入ってみたら普通の範疇でしかなかった3人との残酷なまでの「断絶」を感じてしまうのです。そして、僕に感情移入できるのは「中途半端な才能を持ったがために、美大で『才能』の壁にぶち当たってしまった3人」のほうで、「なんでいちばん普通に頑張っているはずの竹本やあゆが全然報われないんだろうなあ……」と、ものすごくせつなくなってしまったのです。たぶん、この作品の「美しさ」には、そういう「残酷さ」も影響しているのでしょう。

自分の好きな人が自分のことを一番好きになってくれる、たったそれだけの条件なのに、永遠にそろわない気がする。

でもほんと、あらためて言われてみれば、世界にはこれだけ男と女が溢れているんだから、これってすごい確率ですよね。

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