琥珀色の戯言

【読書感想】と【映画感想】のブログです。

夜は短し歩けよ乙女 ☆☆☆☆

夜は短し歩けよ乙女

夜は短し歩けよ乙女

「『偏屈王』の主役を張ってた女優が交代したらしい」
「お、どんな人? べっぴんか?」
「でっかい緋鯉をかついで、達磨の首飾りをつけている」
「……何それ。妖怪?」

 断言しよう、こんな女の子はいねえ! でも確かに「愛らしい」!(ヘンだけど)

 実は、第一章を読んでいたときは、「何これ?」という感じだったのです。独特の軽妙かつ凝った言い回しで繰り広げられるドタバタ劇と、その中心に台風の目のように屹立している可憐な女の子の物語は、どうも僕にはあまりに非現実的すぎて。でも、第2章、3章と読み進めていくにつれて、なんだかとてもこの世界が僕に馴染んできて、第4章を読み終えたときには、もうちょっと読んでいたかったな、と感じていました。
 これを読みながら思ったのは、やはり、本との出逢いというのは、読者である僕のコンディションに左右される面が大きいのだな、ということだったんですよね。実は第一章を読んでいたのは朝から翌朝までの24時間当直の合間で、本のページをめくりながらも、電話の音に怯えている状態だったのです。そういう殺伐とした気分のときには、この本の非現実的な世界に対して、僕は、「なに能天気なこと書いてやがるんだ!ここは戦場なんだぞ!」と言いたい気分になっていたんですよね。
 でも、とりあえず家でくつろぎつつコーヒーなど飲みながら読んでいると、この本の世界というのは、喧騒に溢れて、非現実的な一方で、いつかどこかで見たような気がするノスタルジックで温かいものなのです。読まれる方は、なるべく用事のない休日の昼下がりとか夕方に、お茶でも飲みながらゆったり読むことをオススメします。

 ところで、この本を読んでいて、『うる星やつら』をものすごく思い出してしまったのは僕だけでしょうか?

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