- 作者: 奥田英朗
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2006/03/10
- メディア: 文庫
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旅行中に読みました。奥田英朗さんは、僕の中では、現代日本の男性作家の中で、いちばんコンスタントに「面白い本」を書いている人だと思うのですが、このシリーズは奥田さんの代表作にもかかわらず、なぜか未読だったんですよね。精神科医モノということで、なんとなく身構えてしまっていた部分もあって。
でも、読んでみたら本当に面白くて、しかも出てくる「患者」たちには「ケータイ中毒」とか「自意識過剰」とか僕にとっても身に覚えがある症状もあり、ほろ苦くも上質なエンターテインメント、という感じです。いや、伊良部ってものすごくヘンな人なんだけれども、「ちょっとズレてしまっただけの普通の人間がエスカレートさせてしまったヘンな妄執」にはかなわないのです。
そして、この小説のいちばん凄いところは、「とにかく読んでいて楽しい」という点に尽きると思います。奥田さんは「テーマがあるんだからつまらなくてもいい」という妥協は一切しない人なんですよね。まず面白くなくっちゃ!ということを最優先に考えている人なのではないかなあ。