「本屋大賞」のノミネート作を僕が独断と偏見でランク付けするというこの企画。今年はなんとか全部読めそうかな、と思っていたのですが、『一瞬の風になれ』の感想も書いていないのに(一応読みました)もう明日、今年の『本屋大賞』が発表だそうじゃないですか。いや、時間が経つのは早すぎるよなあ。
というわけで、とりいそぎ、id:fujiponによる「2007年度ひとり本屋大賞」の発表です。こいつセンスないなあ、と苦笑されるなり、本物とのギャップを比較するなりしてお楽しみいただければ幸いです。
まず、10位から6位まで。
第10位 陰日向に咲く(感想:http://d.hatena.ne.jp/fujipon/20060416#p1)
- 作者: 劇団ひとり
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2006/01
- メディア: 単行本
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10位ということは、今回の10冊のなかでは僕にとっては「最下位」という評価になったのですが、けっして「つまらない本」ではないです。ただ、正直「今回の候補作のなかでは読みごたえがない本」だったかな、と。
第9位 図書館戦争(感想:http://d.hatena.ne.jp/fujipon/20070204#p1)
- 作者: 有川浩
- 出版社/メーカー: メディアワークス
- 発売日: 2006/02
- メディア: 単行本
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これも「面白い」んですよね基本的には。僕が高校生のときに読んだら、もっと高い順位だったかもしれません。
正直、この世界における「戦争」というのが、あまりに箱庭的というか、「命懸けで戦争ごっこをやっている人たち」のようにしか見えないのは興醒め
と僕は感想に書きましたが、殺伐とした世界観だったらいいってわけでもないんだろうけどねえ。
第8位 鴨川ホルモー (感想:http://d.hatena.ne.jp/fujipon/20070309#p1)
- 作者: 万城目学
- 出版社/メーカー: 産業編集センター
- 発売日: 2006/04
- メディア: 単行本
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いや、この本も面白い。そして「面白いだけの本」をひたすら追求する姿勢にはヘンに説教臭い「青春小説」よりも、はるかに好感が持てます。でも、「読んで感動した本」という観点で順位をつけると、やっぱりこのへんになっちゃうんだよなあ。
第7位 ミーナの行進 (感想:http://d.hatena.ne.jp/fujipon/20061010#p1)
- 作者: 小川洋子,寺田順三
- 出版社/メーカー: 中央公論新社
- 発売日: 2006/04/22
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僕の感想の一部です。
この小説を読んでいると、僕も自分の子どもの頃を思い出してしまいました。そう、誰の人生にも、子供の頃には「完璧な時代」というのが、ごくわずかな間だけあるんじゃないかな、という気がします。でも、その時代はあまりにも短くて、後から考えると、あまりにも微妙なバランスの上にしか成り立たない、すごく貴重な時間なのです。自分がその場にいるときには、全然気付かないんだけど。
イラストも含めて「すばらしい本」なのだけれども、順番をつけるとなると「このくらい」になってしまうんですよね。でも、この本って、たぶん10年後も「なんとなく捨てられない本」として本棚に残っていそうな気がします。
第6位 失われた町 (感想:http://d.hatena.ne.jp/fujipon/20070126#p1)
- 作者: 三崎亜記
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2006/11
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なんというか、「荒削りなんだけれども、書いた人の情熱と祈りが伝わってくる本」なんですよね。ただ、「物語世界のルール設定が、SFとしてはあいまいすぎる」ことと「ちょっと説教臭くて興醒めするところがけっこうある」ことでしょうか。キチンとした人ばかりの小説っていうのは、あんまり長いと読むほうは少し辛いです。
第5位 夜は短し歩けよ乙女(感想:http://d.hatena.ne.jp/fujipon/20070210#p1)
- 作者: 森見登美彦
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2006/11/29
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もしかしたら、今回の「本屋大賞」では、「失われた町」と並ぶ数少ない「理系小説」なのかもしれません。こんなことあるわけないんだけれども、なんとなく既視感がある、不思議な小説。あと、この本は「装丁勝ち」のような気も。
第4位 終末のフール(感想:http://d.hatena.ne.jp/fujipon/20060807#p1)
- 作者: 伊坂幸太郎
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2006/03
- メディア: 単行本
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伊坂さんって、クールに見えて、本当はすごく熱い人なんですよね、たぶん。この本、「人類滅亡まであと3年(の可能性が高い)」という設定が素晴らしくて、だからこそ、伊坂さんの「説教」も冴えてます。
第3位 一瞬の風になれ(感想:未)
- 作者: 佐藤多佳子
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2006/08/26
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「本屋大賞」の大本命(3冊あって売り上げも期待できるだろうし)。確かに素晴らしい小説であり、スポーツの魅力を存分に伝えてくれる作品です。そして、なんだかすごくもどかしいし、新しいところがあるわけじゃないんだけれどもとにかく面白い!でも、僕は生理的にこの小説には感情移入できないところがあったのでこの順位。というか、運動音痴の僕には、「僕がいわゆる『青春時代』に羨ましくて目を背けていたもの」を「どうだ!」って突きつけられているような気がしたんですよね。とりあえず、詳しい感想は明日にでも。
第2位 名もなき毒(感想:http://d.hatena.ne.jp/fujipon/20070326#p1)
- 作者: 宮部みゆき
- 出版社/メーカー: 幻冬舎
- 発売日: 2006/08
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「ミステリ」としてはたいしたことない作品だと思うけれども、「世界の見えざる悪意」をこれほどひしひしと描いた作品は無いような気がします。そういう「思い知らされること」が本を読む愉しみであるとするなら、この本はまさに、その愉しみを与えてくれる本です。
第1位 風が強く吹いている(感想:http://d.hatena.ne.jp/fujipon/20070320#p2)
- 作者: 三浦しをん
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2006/09/21
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この本には、正直「やられた!」という感じでした。読む前は、あの「文系妄想派小説家」の三浦しをんさんが書いた「スポーツ小説」なんて、どこが面白いのかねえ……おまけにやたらと分厚いし……と「泡沫候補扱い」だったのですけど、最初がやや読むのがだるかったものの、中盤以降はまさに本物の箱根駅伝を観ているかのような「目の離せない」小説でした。『一瞬の風になれ』は、僕の「運動音痴魂」が拒絶するんだけれども、この『風が強く吹いている』は、受け入れOKだったんだよなあ。それは、『一瞬の風になれ』が、所詮「スポーツエリートたちの物語」のように思えるからなのかもしれないし、この『風が強く吹いている』が、あまりに「マンガ的」な展開で、かえってエンターテインメントとして読めるからかもしれないのですけど(でも、この本は今回の10冊のなかで一番読んでいて泣けました。なんだかね、ここに描かれている景色の美しさに泣けた)。たぶん「本屋大賞」で1位になることはないと思いますが、僕にとっての2007年の「ひとり本屋大賞」をこの本に捧げます。
いちおうここで「発表前夜」ということで「本屋大賞」(公式)について言及しておくと、今回は本当にフタを開けてみるまではどの作品が大賞なのかは不透明です。いや、3冊分売れることや作品に対する下馬評を考えると『一瞬の風になれ』が大賞になる可能性が最も高そうなのですけど、僕のような文化系男女が中心のはずの書店員さんたちは、あの「スポーツもの」を素直に受け入れられたのだろうか?
今回は「陸上モノ」が2編、「終末モノ」が2編、「京大モノ」が2編となんだか似たような作品が固まってしまったような印象があるのと、ライトノベル系というか「読みやすい」作品が多かったような気がします。もちろん「読みやすさ」は素晴らしいことなんですけど、その一方で、「本屋大賞」のノミネート作が「書店員が売りたい本」ではなくて「書店が売れると思っている本」にシフトしてきているのではないか、という疑問があったり、参加している書店員さんたちが増えることで、全体的に読み手のレベルが下がり、「読みやすい本」が増えてきているのかな、という懸念もあるんですよね。しかし、実際に読んでみると、決められた本を10冊も読むというのはけっこう大変でした!
最後に、僕の「本屋大賞」(公式)の予想を書いておきます。
第1位:一瞬の風になれ
第2位:陰日向に咲く
第3位:夜は短し歩けよ乙女
それでは、発表を待つことにしましょうか。