琥珀色の戯言

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先達の御意見 ☆☆☆

先達の御意見 (文春文庫)

先達の御意見 (文春文庫)

「負け犬の遠吠え」で日本に論争を巻き起こした著者が、林真理子田辺聖子瀬戸内寂聴上坂冬子・板東真砂子・阿川佐和子らと激突する、負け犬他流試合10番勝負。負け犬のサンドバックぶりを、とくとお楽しみください!

 この本、基本的には酒井順子さんという人が好きで、『負け犬の遠吠え』を読んでもいちいち腹を立てないような人向けだと思います。内容的には、各界の高名な女性たち(鹿島茂さんだけ男性)が集まって、「酒井さん、『負け犬の遠吠え』がたくさん売れてよかったね!」「あれは素晴らしい本だね!」と対談しながら誉めそやすというもので、ベストセラー作家になると、先達たちもこんなに温かく接してくれるのだなあ、と感動してしまうくらいです。
 ただ、それでも対談相手が確かに一癖も二癖もある女性たちであり、みんなけっこう自分の言いたいことを言っているので対談相手に興味がある回はけっこう面白かったりするんですよね。酒井さん自身はあまり自己主張をガンガンされるタイプではないのですが、相手の話を引き出すのはなかなか上手いなあ、と。

小倉千加子さんの発言より

(「負け犬」になりやすい女性は)別に先天的という意味じゃないですよ。非常に早い時期、幼稚園ぐらいの時期に決定されてしまう。一つの条件はある程度の裕福さ。豊かさは、結婚への切実さを希薄にします。自分で食べられれば、飼い主を必死で見つけようとは思わないでしょ。あと、都会に住んでいること。学歴や職歴もあると思いますね。一度、底を見た人たちは堅実に寄り添うように結婚し、共働きで、子供を二人つくるという生き方をすると思う。

内田春菊さんとの対談より


酒井順子:某結婚紹介所の会報を見たら、女性と巡り会いたい男性と、男性と巡り会いたい女性の、一覧表になった通信欄があって。プロフィールには、年齢や離婚歴の有無など。さらに希望する相手の性格、身長、学歴やら年収やらが書いてある。そこに「暴力不可」と「宗教不可」っていうのが沢山あるのに、びっくりしました。

内田春菊:その人には、書かずにはいられない経験があるのね。

酒井:そりゃ暴力は不可だろう! って思うんだけど、そう書かれた欄がダーッと並んでいるんです。

 僕はこの本を読んで考えたのですけど、酒井順子さんが定義しているところの「未婚、子ナシ、30代以上の女性」(でも、ひとりで食べていけるくらいの収入とか技術は持っている)というのは、本当に社会において切実な「負け犬」ではないような気がするのです。病院とかで働いていると、もっと生きていくことそのものがギリギリな人(配偶者や子供の有無にかかわらず)ってたくさんいるよなあ、と感じますし。

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