琥珀色の戯言

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トゥモロー・ワールド ☆☆☆

西暦2027年、人類に子どもが誕生しなくなり、世界は荒れ果てていた。英国のエネルギー省官僚のセオはある武装集団に拉致されるが、リーダーは元妻のジュリアン。彼女は1万ポンドと引き換えに検問を通過できる通行証がほしいと言う。彼女の目的は、ひとりの移民の少女を新しい社会を作る活動をしている「ヒューマン・プロジェクト」に届けること。しかし、そのグループには実態がなく、なおかつ、その少女は重大な秘密を抱えていた。
ハリー・ポッターとアズガバンの囚人』や『リトル・プリンセス』などのファンタジー色の濃い作品を手がけたアルフォンソ・キュアロン監督が、ミステリーの女王P.D.ジェイムスが手がけたSFを製作費120億円かけて映画化。長回しで緊張感を持続させたことでリアルな迫力に満ちた作品になった。

↑はamazonでの紹介文の一部なのですが、僕にとっては、「うーん、惜しい!」という感じの映画でした。この作品のあらすじを読んで、僕がいちばん気になったところって、「どうして人類に子どもが誕生しなくなったんだろう?」ということだったんですよね。しかしながら、作中では、その「理由」に関して「ウイルスが流行して……」みたいな理由らしきものの説明が少し出てくるだけで、ほとんどスルーされているのです。「原因不明」だということなのかもしれませんが、正直、「そんな興味深い世界設定をつくっておきながら、そこに何も「仕掛け」がないなんて、なんだか勿体ないなあ」という感じでした。結果的には、『トゥモロー・ワールド』は、ひとりの少女をめぐっての「少子化プライベート・ライアン」みたいな映画になってしまっています。もちろん「プライベート・ライアン」はつまらない映画ではありませんが、この映画には、もっとSF的な驚きを期待していたのに。
ところで、ネット上でもかなり話題になったクライマックスの長回しのシーンなのですが、観ていて確かに凄い迫力ではあったのです。しかしながら、僕はこのストーリーそのものに感情移入できなかったので(なんだか、印籠を持っているにもかかわらず、もったいぶって使わないうちに助さん格さんが死んでしまう水戸黄門を視ているみたい)、このシーンの必然性が感じられなかったような気がしてなりませんでした。いっそのこと、この技術、戦争映画で使えばよかったのでは。
 しかし、あのシーンが玄人筋に評価されるのって、たぶん、僕たちがマイコンゲーム黎明期に、スクウェアの『WILL』というアドベンチャーゲームで「アニメーションでまばたきをする女の子」を見たときの感激みたいなものなのかもしれませんね。その「難しさ」を知っているからこそ、感動できる技術というのもある、ということなのでしょう。『WILL』も、それまでのマイコンアドベンチャーを知らない友人からは、「そんなにまばたきが凄いんなら、テレビでアニメ見りゃいいじゃん」って言われたものなあ。

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