琥珀色の戯言

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自虐の詩日記 ☆☆☆

自虐の詩日記 (幻冬舎文庫)

自虐の詩日記 (幻冬舎文庫)

映画「自虐の詩」にて、幸薄いヒロイン・幸江を演じる中谷美紀。朝の五時から遊園地で絶叫したり、ちゃぶ台をひっくり返されたりと、気がつけば今日も二十四時間起きている!そんな苛酷な日々にも、新しい出会いや毎日のロケ弁など、楽しいことも待っている。映画づくりの困難とささやかな幸せを綴った、映画を地でいく「自虐的」撮影日記。

 僕は中谷美紀さんが書かれる文章が好きですし、『嫌われ松子の一年』という撮影日記もすごく面白かったので、この『自虐の詩日記』は、けっこう楽しみにしていたのです。『mixi』で中谷さんが書かれているというのも、この本が上梓されてはじめて知りましたし。

 しかしながら、結論から言うと、「なんだかどうも『嫌われ松子の一年』に比べると、いろんな意味で『キレが悪い』し『ボリュームにも乏しい』という感じでした。読み終えたとき、「うーん、これで500円……いきなり文庫で出た理由もわかるよなあ……」と。
 けっしてつまらない本ではないです。気軽に読めるし、「女優・中谷美紀」が感じたことが素直に書かれています。
 ただ、なんというか、ちょっと「毒気に乏しい」というか「よそいき」なんでるよね文章も内容も。出てくる人もほとんどイニシャルだし。

 おそらく、その原因には、これが『mixi』で書かれていた、という点が大きいのではないかと僕は推測しています。
 いままでの「撮影日記」の場合は、自分で日記を書いて、それが活字になった時点でみんなの目に触れる、というプロセスだったと思うのですが、『mixi』の場合は、書いて「更新」すれば、すぐにマイミクの人たちの目に触れてしまいます。もちろん、その中には中谷さんの知り合いや映画のスタッフもいるわけで、そのことによって、すぐにさまざまなリアクションが返ってくる可能性があるのです。
 そうなると、やっぱり「公人・中谷美紀」としては、書く内容もそれなりに「自制」してしまうのではないかと。
 他人の悪口を書いた日記を公開することと、誰かの目の前で悪口を言うことは、やっぱり違いますからね……

 『mixi』だから、友人・知人が読んでいるからこそ、書きにくい場合というのは、たしかに存在するのかもしれません。

 まあ、今までの中谷さんの文章の「率直さ」が好きだった僕としては、ちょっと物足りない本ではありました。『自虐の詩』の中谷さんの撮影期間は40日間しかなかったんだなあ、日本映画って、このくらいの撮影期間なのか……なんていう発見もあったんですけど。

 ちなみに、こんな記述はなかなか興味深かったです。

『インド旅行記』を締めくくる第3弾、東・西インド編が先日発売になりまして、と申しましても、暇に飽かせて駄文を連ねただけの代物で、amazonなどのレビューでは既刊の2冊に関して、

「ご指摘の通りです! 申し訳ございません」

 と謝りたくなるほどのご意見をお見かけしますが、勇敢な学生諸氏とは異なり、インドへ行ったからといって自らの身を危険に晒すつもりはさらさらなかったもので、ドミトリーに宿泊するような極貧旅行を気取ったりはしませんでしたし、体裁を繕うためにゴーストライターに委託するようなこともいたしませんでした。

『インド旅行記(1)北インド編』のamazonでのレビューはこんな感じです。

ちなみに、僕が書いた『インド旅行記(1)』の感想はこちら。

 amazonでレビューを書いている人たちに対して、中谷さんはけっこう本気で言い返してます。ある意味、こんなふうに著者に届いていて、読んでもらえているなんて、ちょっと羨ましい……
 こちらで紹介されている森見登美彦さんの話も僕は読んだのですが、作家・著者というのは、けっこうネットで自分の作品のレビューを読んでいるのだなあ、と驚いてしまいました。確かに気になるだろうし、「忌憚の無い意見」を読むには、作家にとってもネットというのは便利なツールなのでしょうけどねえ。しかし、ここまで読んでいることを「公言」されると、書く側としては、ちょっと身構えてしまいますね。まあ、さすがにこのブログのような辺境まで来られる著者は皆無だとは思いますが……

 というわけで、著者の皆様、僕の感想を万が一読まれることがあったら、ぜひコメントください。心よりお待ちしております(笑)。

嫌われ松子の一年

嫌われ松子の一年

インド旅行記〈1〉北インド編 (幻冬舎文庫)

インド旅行記〈1〉北インド編 (幻冬舎文庫)

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