琥珀色の戯言

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おもひでぽろぽろ ☆☆

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時は1982年、27歳のOLタエ子が山形の義兄の実家へと一人旅し、そのさなかにかつて小学校5年生だったころの自分を回想していく。岡本螢と刀根夕子による原作コミックは、小学校時代のみを描いているのだが、高畑勲監督は新たにOLのヒロインを設定し、ふたつの時代を行き来させながら、ひとりの女性の生きざまを露にしていくと同時に、彼女が行き着いた村で行われる有機農業の美徳を説きながら、田舎と農業を礼讚していく。

 うーん、アニメとしての映像のすばらしさは認めます。しかし、今井美樹柳葉敏郎そっくりに描かれたキャラクターと2人の素の喋りには当時からすごく違和感があったのですが、公開から15年経った今観ると、その違和感はさらに増しているような……

 今回あらためて見直して思ったのですけど、僕はこの映画、どうしても受け入れられません、「良い映画」なのかもしれないけど、すごく不快。
 田舎の人たちの「善良さ」だけが描かれているようだけど、結局彼らは「農家の嫁」を求めているだけにしか僕には思えないんですよね。いきなり「トシオの嫁に」なんて言い出す、ああいう無遠慮さって、田舎に引っ越してきて、その濃厚な人間関係に苦しんだ僕にとっては、ものすごく気障りなんです。あのばあちゃんがタエ子に耳あたりの良いことばかり言っているのを聞くたびに「そんなのに騙されるな、あいつらは『釣った魚に餌はやらない』ぞ」というような、ほの暗い憤りが、僕の心に浮かんでくるのですよ。
 この映画で描かれている「田舎礼讃」って、なんかすごく上っ面なものだとしか思えないんだよなあ。

 押井守さんが、著書『立喰師、かく語りき。』のなかで、こんな辛辣な宮崎駿評を書いておられます。

琥珀色の戯言―『立喰師、かく語りき。』

 押井:この間の『ハウルの動く城』だって、「CG使ってないんだ」って宮さん(宮崎監督)は言い張ってたけど、現場の人間は使いまくってるよ。あの人が知らないだけだよ。まるきり裸の王様じゃないか。それだったら、自分の手で(CGを)やったほうがよっぽどましだ。いや、わかりやすくて面白いから、つい、宮さんを例に出しちゃうんだけどさ(笑)。

 いかに中性洗剤使うのやめたって言ったところで、結局は同じことじゃない。宮さん、別荘に行くとペーパータオルを使ってるんだよ。そのペーパータオルを作るために、どれだけ石油燃やしてると思ってるんだ。やることなすこと、言ってることとやってることが違うだろう。そこは便利にできてるんだよね。自分の言ったことを信じられるってシステムになってるんだもん。

 まあ、『おもひでぽろぽろ』は高畑勲監督、ではあるのですが、この映画って、まさに「自分はペーパータオル使いながら、周りには自然保護を訴えている作品」のような気がするのです。実際に「田舎や農家のドロドロした部分」を描くわけにはいかないっていうのはあるんだろうけどねえ。

立喰師、かく語りき。

立喰師、かく語りき。