琥珀色の戯言

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蟲師 ☆☆

蟲師 (通常版) [DVD]

蟲師 (通常版) [DVD]

内容紹介
380万部を超えるベストセラーコミックの実写映画化。『AKIRA』の大友克洋監督が大胆かつ繊細なVFXを駆使して蟲たちの幻想的な世界を映像化!2006年ベネチア映画祭正式出品作!

今から100年前の日本。精霊でも、幽霊でもなく、不可解な自然現象を引き起こし、時には、人間にとりつく、蟲と呼ばれる妖しき生き物がいた。そんな蟲を理解し、とりつかれた人々を癒す能力を持つ者は‘蟲師’と呼ばれた。

【ストーリー】
蟲師ギンコは、蟲たちを引き寄せる体質のため、旅を続けていた。立ち寄った宿で角が生えてしまった少女を癒すなど、出会う人々を蟲の妖しい仕業から解き放ち、救っていた。一方、もうひとりの蟲師、淡幽は、文字を記録し、蟲を封じていたのだが、一ヶ月ほど前にある蟲師の話を聞いて以来、不可解な病に臥していた。淡幽を救おうと、手がかりが書き記されている巻物を紐解くギンコ。だが、ある件に差し掛かると、文字が巻物から蠢き出し、ギンコの体にのりうつっていくのだった!一体、どんな蟲が彼らを翻弄しているのか?ギンコが蟲師となった秘密も解き明かされていく!

 この映画、劇場公開されているときに「蒼井優ちゃんも出てるし、観てみようかな」と考えているうちに、いつのまにか終わってしまっていたのですけど、今日DVDを観て、正直「ああ、やっちまったな大友さん……これ、劇場で観なくてよかった……」と思いました。
 いや、なんというか、原作を読んだことがない僕は「今まで一度もテレビ版もマンガも読んだことがないのに、いきなり『新・劇場版ヱヴァンゲリヲン』を観にきてしまった人」みたいな感じだったのです。全然意味わかんないよこれ……
 正直、これが単館ではなく、全国ロードショー公開されていたというのは、ちょっと信じがたいです。オダギリジョー蒼井優などの出演者に惹かれて観た観客が、観終えたあとにため息をつき、首を傾げながらとぼとぼと劇場を出て行く姿が僕にはくっきりと見えます。
 大友克洋監督は、「日本の山や森、里などの原風景をこの作品に留めておきたかった」と仰っておられるようですし、確かに「緑」がすごく印象的で、映像美は素晴らしいです。でも、この原作で、あの宣伝で、これを見せられると「なんじゃこりゃ……」と思う人が圧倒的多数なのでは。いっそのこと、ストーリー性を完全に排除して、環境DVDにすればよかったのに。

 最初の30分くらいのエピソードはそれなりに期待をもたせてくれるのですが、中盤から終盤にかけての盛り下がりはすごいです。いくらなんでも、このへんで何か起こるんだろう……とか期待してしまうんですけど、途中からは「もうすぐ2時間なんだけど、これで終わっていいの?」と心配になってきます。最後の最後まで肩透かしの連続。3時間待ちでようやく乗れたアトラクションが、「バズ・ライトイヤーアストロブラスター」だったときのような負の衝撃!
 そもそも、「なんでこのキャラクターは回復したのか?」とか「その『遺棄』に何の意味があるのか?」など、「なんでそうなったのか?」という理由がわからないシーンだらけです。

 宣伝を観て、「ああ、『どろろ』みたいな映画なんだな」と想像していたのですが、この映画、主人公が着物を着ていること以外は、全く『どろろ』に似ても似つかぬ作品です。『どろろ』を「志は低いけどサービス精神は満点な映画」とするならば、『蟲師』は、「志は高いけど、観客の存在を無視してしまった映画」という感じ。こういう映画は「一部の熱狂的なファン」を生み出す可能性も高いのでしょうけど。

 たぶん、こういう映画があってもいいのだとは思います。ネタにはなるし。
 でも、「自然の美しさ」を観客を喜ばせながらスクリーンに留める方法って、なかったのでしょうか……

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