琥珀色の戯言

【読書感想】【映画感想】のブログです。2016年8月より、『はてなブログ』に移行しました。

新井貴浩のFA宣言と「糟糠の妻」が裏切られる理由


新井が移籍前提にFA宣言(中国新聞)

30年間ずっとカープファンだった僕なのですが、昨日はこのニュースが気になって、ほとんど眠れませんでした。
「まあ、ちょっと拗ねてるみたいだけど、結局最後は残留してくれるはず。それより黒田の穴をどう埋めるかなあ……」というのが新井の去就に関する僕の感覚でした。
地元出身で、「ずっとカープファンだった」ということや「駒澤大学時代は「とてもプロに入れるレベルではなかった」(他球団のスカウトは、新井指名に失笑していたそうです)選手にもかかわらず、先輩の野村謙二郎の強い勧めでカープに指名され、その後も打てず守れずの酷い状態だったのに山本浩二監督がファンの批判の集中砲火にさらされながら起用し続けたおかげでこうして一流選手の仲間入りできたという経緯、昨年は「生涯カープ宣言」までしていることからも、「いくらなんでも、新井が出て行くようじゃ、今後FA権を獲得してカープ残留する選手はいなくなるよなあ」と思っていましたし。

残留して後悔したくなかった」
「環境を変えて前に進みたかった」
「一野球人として自らを厳しい環境に置き、その中で自分がどう変われるかという挑戦する気持ちが出てきた」

要するに、カープ残留すると「後悔」しそうだし、「前に進めない」し「ぬるま湯のような環境」だということらしいです。すごいなこの人。ウソつくにしても、もうちょっとマシな言い方もありそうなものなのに、カープファンに後ろ足で砂かけまくって逃亡かよ。
僕の心のなかには、この裏切り者の偽善者!お前なんか、●に●●れて●ぬか、●●●●●●くらって●起●能になるか、●●で全然打てずに罵倒されて●●●行きになれ、●ね!!(不適切な表現ですので、伏字にしました)。

他球団ファンの人にはわかりにくいと思うのですが、カープファンにとって、新井というのは、本当に「カープファンに愛されていた選手」だったのです。阪神ファンに方は濱中を思い浮かべていただければよろしいかと(もちろん、カープファンの新井への思い入れは、その10倍はあると僕は思っていますが)。本当に「打てない、守れない」時代から、カープファンは新井に罵声を浴びせながらも、その愚直なまでの野球にうちこむ姿勢(に見えたんですよ当時は)に心を動かされ、「いつかすごい選手になる!(…かもしれないし)」あるいは、「でも、他に4番を打てそうな選手もいないし」と、新井を応援し続けてきたのです。2005年のシーズンにホームラン王を獲ったときには、「これは1年だけの『確変』ではなかろうか…」とみんな心配していましたしね。というか、そのシーズンの途中でさえ、「いつ打てなくなるか……」と不安だったものなあ。
 ほんと、新井っていうのは、カープファンにとっては「ダメだった時代からずっと見守ってきた愛すべき選手」だったんですよ。そして、そのダメだった時代をともに耐え抜いたという意識があるからこそ、愛着もひとしおだったのです。

でも、新井はそんなファンの気持ちを裏切って、某人気球団への移籍に踏み切ろうとしています。
このFA宣言がカープファンに与えている衝撃は、一野球選手の裏切りというよりは、「人間不信」のレベルにまで達しているようにすら思われるのです。

 僕がこの新井のやり方を見て思い出したのは、Mr.Children桜井和寿さんの「裏切り」のことでした。
 桜井さんは、Mr.Childrenが売れてまもなく、無名時代からずっと彼の才能を信じて応援してくれていたレコード会社の社員である女性と1994年に結婚したのですが、その結婚生活は長く続かず、1997年に「ギリギリガールズ」のメンバーの一人との不倫が発覚し、結局、「糟糠の妻」と別れて「ギリギリガールズの人」と再婚しました。
この話を聞いたとき、僕は「桜井ってヤツは、売れたとたんに『糟糠の妻』を捨てて芸能人と不倫なんて、最低の人間だな」と、すごく不快になったものでした。まあ、世間的にみても、「美談」ではありえない話ですよね。

でも、あれから10年経って、僕にもその「理由」が、なんとなくわかるような気がしました(というか、僕の勝手な思い込みかもしれませんが)。
「糟糠の妻」って、自分が成功してみると、けっこう「ウザイ」ものではないのかな、と。
 もし僕が桜井和寿だったら、と考えると、せっかく自分の曲が売れて評価されるようになったのに、妻からはずっと「売れなかった頃のあなたは……」なんて、ずっと「昔のあなた」であることを押し付けられるのは、あんまり居心地のいいものではないですよね。
いや、桜井さんの前妻がそんな人だったかどうかはわからないのですけど、成功した人にとっては、「昔のダメだった自分を知っていて、ずっとそういう目線で見ようとしてくる人」っていうのは、傍にいるだけで、だんだん邪魔になってくるのではないかな、という気がするのです。
「恩知らず」な話だけれど、「恩」だけで愛情というのはキープできるわけじゃないし、身近なだけに、かえって束縛され、抑圧されているように思えてくるのではないかなあ。


新井の「裏切り」というのは、もしかしたら、「カープファンに愛されすぎたゆえ」なのかもしれないな、と僕は感じています。「昔のダメな時代から応援してやってたのに!」と僕らは思っているのだけれど、新井としては、いつまでもカープで「糟糠の妻」に小言を言われ続けながらやっていくより、新天地(というかたぶん阪神)で、昔のことなんて知らない人から、「先天的なスター」として扱われたい、という気持ちがあるのではないかと。
俺はこんなに凄い選手になったのに、カープファンはいつまでも「昔は打率2割でエラーばっかりの粗いさん」扱いだ、とか思っているのかもしれません。それを、自分で認識できているかどうかはさておき。

 そもそも、カープファンは、今年の新井のFAに関して、昨年の黒田に対するような「大残留キャンペーン」は行いませんでした。新井自身が「生涯カープ」と去年宣言していたこともあり、ファンも「新井は大丈夫だろう」と油断していましたし、去年の黒田のFA騒動で、みんな疲れ果ててもいたんですよね。あれは本当に「美談」だったけれど、ファンとしては、「これから毎年誰かが出ていきそうになるたびに、あんな大キャンペーンをやらなければならないのか?」とも感じていたのです。
でも、新井自身は「自分に対する『残留コール』の少なさ」に、傷ついていたのかもしれません。
 もし、去年の黒田に対するものと同じくらいの熱さで新井に「残留コール」を送れていたら、新井は残留していたのかも。
 黒田がたった1年でメジャー挑戦に傾いてしまったことを考えると、もしかしたら、カープファンは、残留のために力を傾注する相手を間違っていたのかもな、とも思います。

僕は(元)カープファンとして、新井を人間として軽蔑しますし(もちろん、桜井さんもその点に関しては「情けない人間」だと思っています)、「嫌いで出て行くんじゃない」なんて言われると、「くたばれ偽善者!」という怒りすら湧いてきます。問題は、「好きか嫌いか」じゃなくて、「出て行くか出て行かないか」なんだからさ。こういうのって、まさに「不倫男の言い訳」だよね。
でも、「新井が出て行きたい理由」というのも、頭ではわかるような気もするんだよ。わかるだけに、それでも残る、と言えず、さらにカープファンを傷つけるような言葉を羅列して出て行くこの男を許せない。僕にとって、新井は「世界一嫌いなスポーツ選手」になりました。亀田一族を金鯱賞サイレンススズカくらいぶっちぎっての圧倒的な第一位。

僕はもうカープファン、いや、野球ファンをやめるつもりです。こんなことでこんなに悲しくて悔しい気分になるのは、もうたくさんだから。この件で、「それでもカープを応援する」っていうのは、結局のところ、現在のプロ野球のシステムを追認することにしかならないような気がするから。
新井も、あんなに愛されなければ、こんなに憎まれることもなかったのだろうけど……