琥珀色の戯言

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恋愛小説ふいんき語り ☆☆☆☆


恋愛小説ふいんき語り

恋愛小説ふいんき語り

出版社からのコメント
ふいんき語り」とは......麻野一哉(「弟切草」「かまいたちの夜」)、飯田和敏(「アクアノートの休日」「巨人のドシン」)、米光一成(「ぷよぷよ」「バロック」)というゲーム好きなら誰もが知っている名作を手がけた本好きゲーム作家三人が、愛情と好奇心をもって本を語りあうトークユニットです。
現在読者はもちろん作家からも熱い注目を受けるゲーム作家・書評トークユニットが今回挑んだのは、「恋愛小説」しかも「女性作家の作品のみ」。
恋愛小説を読む楽しみとは? 登場人物たちから学べることとは? これって本当に恋愛? それぞれの人生の悩みを重ねつつ、全20作の恋愛小説を語り尽くす旅が始まります。戦いの果て、彼らにモテの女神は微笑むか!?
「恋愛とお金について」「共感と感情移入のちがい」などなど、他に類を見ない考察も冴え渡ります。
未読の作品があっても大丈夫! こさささこによる鋭くもおかしいあらすじマンガが、20作品すべてについています。
恋愛小説を愛する読者はもちろん、女性の深淵を覗きたい男性にも、本を読む人すべてが楽しめるエンターテイメント書評鼎談です。

目次
吉屋信子『わすれなぐさ』;瀬戸内寂聴『夏の終り』;有吉佐和子不信のとき』;吉本ばなな『キッチン』;村山由佳天使の卵』;小池真理子『恋』;林真理子不機嫌な果実』;川上弘美センセイの鞄』;江國香織『東京タワー』;水村美苗本格小説』;綿矢りさ蹴りたい背中』;小川洋子博士の愛した数式』;姫野カオルコ『ツ、イ、ラ、ク』;恩田陸夜のピクニック』;絲山秋子『袋小路の男』;島本理生『ナラタージュ』;桐野夏生魂萌え!』;本谷有希子『生きてるだけで、愛。』;美嘉『恋空〜切ナイ恋物語』;山田詠美『無銭優雅』

「恋愛小説」って僕は苦手なんだけどな……と思いつつ、この本を読み始めてみたのですが、読んでみるとかなり面白くって惹き込まれてしまいました。そして、僕はこの本を読んで、こういう「恋愛小説」の読者って、大きく分けて2種類に分かれるのではないかと思ったんですよね。ひとつめのグループは、王道の「小説の中の恋愛に感情移入して、世界にのめりこんでしまう読者」。たぶんこちらが多数派。しかしながら、実際にはそういう「普通の読者」だけではなくて、第2グループとして、こういう「恋愛小説」を「ネタ」としてとらえ、「こんな都合のいい話ないだろ!」と突っ込みながら読むことに歓びを見出す人たちが存在しているのではないでしょうか。「と学会的な読み方」とでも言えばいいのかな。
いままでの恋愛小説に対する「書評」は、常に「真面目に感情移入する読者」によるものだったのですが、この『恋愛小説ふいんき語り』は、数少ない「愛2グループ」による書評なのです。
あらためて考えると、本当に売れている女性作家の作品というのは、林真理子さんにしても江國香織さんにしても、「やりすぎなくらい過剰な世界」を描いていて、僕は読むたびに「こんなの読んでその気になっている女性読者って、勘違いしているよなあ……」と内心苦笑していたのですが、「小説世界にのめりこんでいる読者」だけではなく、僕のような「ウォッチャー」も(ある意味)愉しませてくれるような作品のほうが、「真面目すぎる恋愛小説」よりも売れるんですよね。女性のなかにも、「苦笑しながら一気に読みました」なんていう「恋愛小説フリーク」がけっこういるのではないかなあ。
おそらく、作家側も、ある種の「確信犯」なのだと思います。少なくとも、江國さんや村山由佳さんは、自分たちの作品を「ネタとして消費している読者がいる」ことを知っていてやっているんじゃないかと。

実は、「恋愛小説嫌い!」と言いながらも、僕はここで取り上げられている20作品のうち9作品は読んでいるんですよね。そういう意味では、立派な「恋愛小説愛読者」なんだよなあ。もっとも『博士の愛した数式』や『夜のピクニック』は「恋愛小説」とは言い難いような気もするんですけど。
しかし、ここで取り上げられた小説のあらすじを読むと、「恋愛小説」というジャンルに関しては、あの悪名高き「ケータイ小説」と内容的には五十歩百歩であり、「ケータイ小説」との違いって、顔文字の有無とか文体だけなのではないか、とも思えるのです(この本に掲載されている各作品についての、こさささこさんの「あらすじマンガ」を読むと、なおさらそう感じられます)。まあ、実際のところ、読んでいて「そういう形式の違い」みたいなのって、もしかしたら最も読者の好みが分かれるところなのかもしれませんが。

lesson9『東京タワー』(江國香織)より。

米光:ゲーム化するなら、吉田家のおとうさんを主人公にして、家に19歳の男を寄せつけない設定にする?

飯田:家にたてこもって、若い男が近づいてきたら、撃つ(笑)。耕二は殺されてもしょうがないよ。

麻野:息子を友だちに紹介したばっかりに、誘惑されて奪われた透の母親も気の毒。その恨みも晴らしてあげたい。世の中から、恋愛体質の男女を一掃するゲームにしようか(笑)。そいつらさえいなかったら、みんな幸せなんやから。

米光:みんなって!

麻野:日本中の誌史や耕二を集めて、まとめて豪華客船に放り込む。

飯田:豪華客船! その名も「大和」(笑)。貴美子と耕二がいつものラブホに入ると、なぜかそこは船の中。「ヤマト、発進!」。

米光:館長は吉田家の父親なんだよね。

飯田:そう。船は世界一周をするんだけど、港々に停泊するたびに各国の恋愛体質の人が乗り込んでくる。で、最終的には300パーセントくらいの乗船率にあってみんな圧死しちゃう、ありえない角度でみんな絡み合って。

麻野:なんでだよ!

飯田:でも、恋愛してるから幸せ。

麻野:最終的には北朝鮮に置いてくればいいよ(笑)。航海中はいろんな男女の組み合わせで不倫をしてもらうんだけど、日夜さまざまな過酷な恋愛ゲームが用意されてて、その勝者だけが、生き残れる。

米光:「カイジ」かよ!

飯田:いや、そこは「コウジ」で。「不倫恋愛黙示録コウジ」(笑)。

米光:でもさ、過酷な恋愛ゲームってどんなの?

麻野:知らん!

僕はこの「不倫恋愛黙示録コウジ」に大爆笑してしまいました。逆に、このネタが楽しめるなんて、『東京タワー』読んでよかったな、というくらいの勢いです。


lesson16『ナラタージュ』(島本理生)のゲーム化も素晴らしかった!

麻野:じゃあ、ゲームにするなら、ホラーになるの?

飯田:妖怪葉山先生。

麻野:学校のネットワークがあって、今年はあの子が葉山の生け贄だよって噂になる。今年は工藤泉だって。

飯田:葉山先生、泉をじぶんの家に呼んで、髪の毛切らせるじゃん、そういうところも使いたいね。

麻野:夜中の学校に黒い影が現れて、少しずつこちらに近づいてくる。

飯田:葉山が来る、葉山が来る。そのTシャツには「ミツバチのささやき」のアナ・トレントがプリントされてる。

麻野:こっちに近づいてくる! あ、電動車椅子に乗っている!

米光:シャカーッ、シャカーッ。iPodからベースの音だけ漏れて聴こえる。あれは「オーバーザレインボウ」の……。

麻野:そこでタイトルが! 「ナ〜ラ〜タ〜ジュ〜〜」(笑)。

米光:血が、たら〜〜っ。

飯田:怖いよう! 車椅子の膝にのってるのは、泉!?

米光:あ、単行本の帯文がこのまま使えそうだよ。

飯田:(怖い口調で)<封印したはずのあの痛みを、よみがえらせてしまう>――小川洋子

麻野:(怖い口調で)<余分な説明はいっさいしません。ただ最初のページを開いてください>――北上次郎

米光:(怖い口調で)<その苦しさと引き換えに帰ることができるのだろう。あの薄暗かった雨の廊下に>!!

麻野:「ナ〜ラ〜タ〜ジュ〜〜」 近日公開!

「ナ〜ラ〜タ〜ジュ〜〜」これも笑った!!

ほんと、純粋なファンの人には怒られるかもしれないけど、「恋愛小説をネタとして楽しめる読者」には、ものすごくオススメの本です。

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