琥珀色の戯言

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モルヒネ ☆☆☆


モルヒネ (祥伝社文庫)

モルヒネ (祥伝社文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
在宅医療の医師・藤原真紀の前に、元恋人の倉橋克秀が七年ぶりに現われた。ピアニストとして海外留学するため姿を消した彼がなぜ?真紀には婚約者がいたが、かつて心の傷を唯ひとり共有できた克秀の出現に、心を惑わせる。やがて、克秀は余命三ヶ月の末期癌であることが発覚。悪化する病状に、真紀は彼の部屋を訪れた…。すばる文学賞作家が描く、感動の恋愛長編。

あの「うずくまって泣きました」の帯が印象的ではあったのですが、僕は基本的に「恋愛小説」ってやつが苦手なので(正直、読んで何かの役に立つとは思えないし、『活字中毒R。』のネタにもならないし)、「僕は読まない本」という認識でした。しかしながら、『本の雑誌・増刊〜おすすめ文庫王国2007年度版』に掲載されていた、あのオビのコメントを書いた店員さんの話を読んで、「読まず嫌い」にならずに、一度は読んでみようかな、と手にとってみたわけです。

結論。
あーこれは「死ぬ死ぬ小説」だ……
トラウマ、自殺願望、昔の男、ピアノ、末期がん、新しい恋人、ものわかりのいい年上の友人……
ある意味、ここまでありきたりの「感動のエッセンス」を詰め込んだ作品はそんなに無いと思います。いや、確かに主人公の真紀と元恋人の倉橋の境遇には同情すべき点は多いとは思うけれど、この人たち、とくに真紀がやっていることって、「周囲の一生懸命生きている人を自分の『自罰的な感情』に巻き込んで、混乱させること」だけのような気がしてなりませんし。本当に「うずくまって泣いた」のは、真紀の現恋人・長瀬だと思うぞ。
作品の内容としては、終末期医療とか、薬の名前とか、よく勉強して書かれているなあ、とは感じました。でも、この作品は、要するに「死」であるとか「恋愛感情」であるとか「終末期医療」の「絵になる部分」だけを抜き出したものであって、「自分に酔いながら読める人」以外にとっては、何この勘違いカップルの話?と一蹴されるような気がします。まあ、こういう「恋愛小説」で「現実のドロドロした部分」が描かれていないことを責めるのはちょっと筋違いでしょうし、その「絵になる部分」に関しては、それなりに美しい話ですので、この「あらすじ」で読んでみようという方はどうぞ、という感じです。
一般的には、これを読んで「うずくまって泣く」のは、かなり難しいとは思いますが。

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