琥珀色の戯言

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動物の値段 ☆☆☆☆


動物の値段―シャチが1億円!!??

動物の値段―シャチが1億円!!??

出版社/著者からの内容紹介
ライオン45万円(赤ちゃん)、リスザル30万円、サイ1200万円、トラ500万円、ガラガラヘビ6万円。動物園にいる動物には必ず値段が付いている。動物の値段を知ることは、動物の置かれている状況、生息数、移動させる難しさや繁殖の方法などなど、動物を今以上に理解するために重要なポイントになる。

書店で偶然見つけて購入。僕はあまり「動物を飼いたい、身近に置いておきたい」というタイプではないのですが、動物園・水族館といった施設は大好きなので、「あの動物って、いくらくらいするのだろう?」という疑問にクリアカットに答えてくれるこの本は、非常に興味深かったです。動物の値段というのは、必ずしもその「派手さ」「人気度」に比例しているのではないのですね。
赤ちゃんとはいえ、百獣の王・ライオンが「(最安値で)1頭45万円」(ライオンは多産系だからということです)であるのに比べて、イメージとしては、動物園に行けば「とりあえずいる動物」であるカバが600万円以上で、サイは1200万円。シャチはなんと1億円!なんというか、動物園(水族館)にとっては、シャチって、「ものすごくコストパフォーマンスの悪い投資」のように思われます。この本には、「なぜそういう価格設定になるのか」というところが、かなり詳しく書かれていて、「動物の生態」がわかるのと同時に、「動物売買の世界の仕組み」も知ることができるのです。

輸入が決まると輸出国から船または飛行機で連れてくることになる。その際、あの長い首はどうするのか? 疑問に思う方も多いだろう。
輸送をする時、キリンには、なんと首を折り曲げた状態で飛行機に入ってもらうのだ!
実はこの首、長さだけ見るとたしかにとても長いのだが、首の骨(頚椎)の数は人間と同じ7個。だから、気の毒だが一生懸命頑張れば首を曲げることはできるので、首をかしげて檻に入ってもらうことになる。

日本の受け入れ先が動物園などで学術目的であればゾウの輸入は可能だと先ほど触れた。では学術目的でなく個人で飼育したりする場合の輸入は無理なのだろうか? サーカスのゾウはどうやって日本に連れてきているの? と疑問に思う方もいるだろう。
実は、サーカス用の動物は、ワシントン条約で特例措置がとられているのだ。つまり、サーカスのゾウは興行目的として「来日」しているという解釈で、ずっと日本にいるわけではないから「輸入」ではないという考え方だ。契約期間が切れたら帰国させるか、または滞在延長手続きをすればいい。

(中略)

さて今、日本の動物園で飼育されているゾウのほとんどは、雄よりも小型で気性が穏やかな雌。日本にいる雄のゾウは数頭だけで、そのうえ、みな高齢で繁殖には適さないという状況にある。加えてこれまで繁殖そのものが真剣に試みられていなかったため、実例もほとんどない。早急に手を打ち、若い個体を輸入して繁殖をしていかなければ、動物園の人気者であるゾウは、近い将来確実に消えてしまうだろう。

ちなみにキリンは1頭350万円〜1300万円(「血統のしっかりとしたキリン」のほうが高値なのだそうです。キリンにも「血統」のよしあしがあって、雑種は安いらしいんですよ)、ゾウは3000万円。日本にいるキリンは、みんな頚椎を傷めているんじゃないだろうか……
僕はこの本を読んでいて、「動物たちの値段」はもちろんなのですが、「動物商という仕事」にも非常に興味がわいてきました。著者の白輪さんには、今度はこれまでの動物商としての半生記を書いてほしいものです。
僕はそういう「動物取引の暗部」も含めてけっこう楽しく読めたのですが、「心の底から動物好きで、動物愛護の精神にあふれている人」にとっては、かなり「腹が立つ内容」も含まれていると思われますので、あまりオススメはできない本かもしれません。

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