琥珀色の戯言

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流星ワゴン ☆☆☆☆☆


流星ワゴン (講談社文庫)

流星ワゴン (講談社文庫)

出版社 / 著者からの内容紹介
38歳、秋。ある日、僕と同い歳の父親に出逢った。
僕らは、友達になれるだろうか?
死んじゃってもいいかなあ、もう……。38歳・秋。その夜、僕は、5年前に交通事故死した父子の乗る不思議なワゴンに拾われた。そして自分と同い歳の父親に出逢った。時空を超えてワゴンがめぐる、人生の岐路になった場所への旅。やり直しは、叶えられるのか?「本の雑誌」年間ベスト1に輝いた傑作。

この本、かなり評判が良いのは知っていたのですけど、こういう「タイムスリップもの」「親子の感動ストーリー」には全く心惹かれないので、実際に手にとることはありませんでした。重松清さんの本では、以前読んだ『その日のまえに』が、あまりに「泣け泣け小説」だっので、あまり好きになれなかったということもあって。
先日、『本の雑誌』の「文庫ランキング」のなかで書店員さんが薦めていたのを読んで購入したものの、しばらく「そのうち読むリスト」に積んだままにしていたのですが、当直のときに思いついて読み始めてしまったら、見事なまでにのめりこんでしまいました。面白い、面白いですよこれ。
いや、「父と子の『親子愛』の物語」「幸せなはずの『日常』の陰に芽吹いていた破綻」というようなテーマは確かにしっかり描かれているのですが、僕はずっと「それで、この主人公は結局どうなるのだろう?」という興味を持続していられたんですよね。
「この物語の結末を見届けたい感」とでも言えばいいのでしょうか。
正直、この本の「内容紹介」を読んでも、「なんてベタな『泣け泣け小説』なんだ……浅田次郎も似たようなの書いてたじゃないか(『地下鉄に乗って』とどちらが先かは知りませんが)」としか思えなかったのですが、純粋に「先が知りたくなる物語」としてオススメできる作品です。
設定そのものはかなり強引で中途半端に御都合主義的であり、「そんなことまでできるのに、なんで未来に反映されないの?」なんて言いたくなるところはあるんですよね、確かに。この世界の、そしてワゴンの「ルール」は、読んでいてもよくわかりません。「論理的整合性」については、いいかげん極まりない小説です。
ただ、にもかかわらず、本当に「面白い」のですよこれ。

中高生くらいのときに読んでいたら、「よくわからない小説」で、なんでこんなチャンスをみすみす逃してしまうんだ、とか、どうしてそんな裏切りに対して寛容になってしまうんだ、というような憤りすら感じてしまうかもしれません。でも、30代半ばをとぼとぼと彷徨っている僕にとって、この小説は、あまりに「自分のために書かれたように思われる作品」だったのです。

「お父さんは、よくわかったよ、いまので。だから、もう無理して考えなくていいんだ」
「……ごめんなさい」
「謝らなくていい」
そんな必要はどこにもない。誰が悪いわけでもない。間違ってもいない。
広樹は僕と美代子の喜ぶ顔を励みにしてがんばって、僕と美代子は広樹ががんばっているを見るたびに嬉しくなった。幸せな家族だったのだと思う。我が家は幸せだった。幸せな日々を積み重ねながら、少しずつ不幸せな未来へと向かっていったのだ。

この文章の重さを噛みしめられるのは、ある程度の長さを生きてきた人間の特権なのではないかなあ。
やるせない、本当にやるせない物語なのだけれども、読み終えると少しだけ「生きてみようかな」という気がしてきます。
中年男性諸氏は、ぜひ。

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