「私の男」桜庭一樹(文藝春秋)
「赤朽葉家の伝説」桜庭一樹(東京創元社)
「鹿男あをによし」万城目学(幻冬舎)
「有頂天家族」森見登美彦(幻冬舎)
「ゴールデンスランバー」伊坂幸太郎(新潮社)
「悪人」吉田修一(朝日新聞社)
「映画篇」金城一紀(集英社)
「カシオペアの丘で」重松清(講談社)
「サクリファイス」近藤史恵(新潮社)
「八日目の蝉」角田光代(中央公論新社)
桜庭一樹さん2作品ノミネートとは、まさに一躍「時代の作家」だよなあ、とか、「本屋大賞に投票するような書店員さん」に人気がありそうな作家が勢揃いしたなかで、「サクリファイス」は大健闘だなあ、というのが、とりあえずの感想です。
しかし、2作品ノミネートは、どうしても票が割れてしまった不利ではあるんですよね。僕は『本屋大賞』では、『赤朽葉家』のほうが上位になりそうな気がしているんですけど。
今回は、「芸能人が書いた話題作」もなく、「告白」や「一瞬の風になれ」全三巻のような長尺もなく、よく言えば粒ぞろい、悪く言えばどんぐりの背比べ、という印象です。ただ、『本屋大賞』に関しては、
(1)いままでに大きな文学賞を獲った作品は「大賞」には選ばれにくい。
(2)極端なエログロは無理(そういえば、今回『ミノタウロス』は入っていませんでしたね)
(3)映像化しやすそうな作品じゃないとダメ。
実は、ノミネート発表前の僕の本命は『鹿男あをによし』だったのですが、先にドラマ化されてしまい、嫌でも売れそうなので、ちょっと不利になってしまったかも。書店員さんたちがみんな大好き森見登美彦、の可能性はありそうなのですが、『有頂天家族』で受賞してしまうと、森見さんにとってあまりプラスになるとは思えません。
というわけで、僕の現時点での本命は、先代「みんな大好き」伊坂幸太郎『ゴールデンスランバー』。直木賞候補になりまくりながら、「人間が書けていない攻撃」で受賞を逃し続けていた伊坂さんのファンとしては、せめてここで桜庭一樹さんに一矢報いたいところなのではないかと。『私の男』の選評が、「人間は書けてないけど、この問題作を世に問うてみたい」というものだったのを聞いたとき、伊坂さんの心境は果たしていかばかりだったのか……
対抗は『赤朽葉家の伝説』。桜庭ファンは、「あっちはもう直木賞獲ってるんだから」ということで、安心してこちらを推すはずです。
穴として『サクリファイス』。ノミネート常連作家ばかりの中でこれが割り込んできたのには、何か理由があるはず(映像化しやすそうだし、ちょっと火をつければものすごく売れそうだし……)。
というわけで、今年も恒例の『ひとり本屋大賞2008』、と言いたいところなのですが、正直今年は早くも諦めモードです。例年は、ノミネート時に3〜4冊くらいは既読になっているのですが、今年はなんとノミネート作のなかで読了した本はゼロですよゼロ!(1冊も読了してないのに、予想なんかすんな!って話ですが)
しかも、あんまり「読みたい本」も無いんだよね……
ところで、この賞って、どんどん「書店員が売りたい本」じゃなくて、「書店員が売れそうだと思っている本」になってないかい?