琥珀色の戯言

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キサラギ ☆☆☆☆


キサラギ スタンダード・エディション [DVD]

キサラギ スタンダード・エディション [DVD]

解説: 自殺したアイドルの1周忌に集まった5人の男が、彼女の死の真相について壮絶な推理バトルを展開する密室会話劇。『ALWAYS 三丁目の夕日』で日本アカデミー賞を受賞した古沢良太の巧みな脚本を、『シムソンズ』の佐藤祐市監督が、コミカルかつスリリングに演出。小栗旬ユースケ・サンタマリア小出恵介ドランクドラゴン塚地武雅香川照之という人気、実力を兼ね備えた5人が繰り広げるハイテンションな会話劇から目が離せない。(シネマトゥデイ

あらすじ: 売れないグラビアアイドル如月ミキが自殺して1年、彼女のファンサイトの常連である5人の男が追悼会に集まる。家元(小栗旬)、オダ・ユージ(ユースケ・サンタマリア)、スネーク(小出恵介)ら5人は、思い出話で大いに盛り上がるはずだったが、「彼女は殺された」という言葉を引き金に、事態は思わぬ展開を見せ始め……。(シネマトゥデイ

 この『キサラギ』、最初にレンタルDVD店に並んでいるのを見たときには、『アキハバラ@DEEP』みたいな中途半端にオタクをバカにした映画か?という感じで全く興味がわかなかったのです。出演者も、小栗旬ユースケ・サンタマリア小出恵介ドランクドラゴン塚地武雅香川照之と、個性派が揃ってはいるものの、僕にとっては「なんて暑苦しいメンバーなんだ……」という印象でしたし。結局、妙に世間の評判が良いので借りてみたのですが。

 観終えての感想は、「とにかくよくできている」し、「DVDを借りてきて夜寝る前に家で観るには最適」の映画だなあ、というものでした。演劇の世界ではけっこうよくみかける、「全然関係なさそうな人たちが集まっていて、結局はみんなが事件の『関係者』であることが判明していく話」であり、まさに「よくある一幕物の舞台を観ているような感じ」です。
 ただ、この作品を観る人の多くは、そういう舞台を観たことはないでしょうし、かなり斬新な印象を受けるのではないかと思います。かなりこじつけがましいといえばそうですし、いくらなんでもそれはないだろ……というような「人間関係」が暴かれていくので、リアリティを求める人にとっては「興醒め」も甚だしいかもしれませんが。
 こういうふうに「映画」にするとなると、どうしてももっと派手にしたり、場面転換を入れたり、人気女優を出演させたりしたくなると思われるなかで、こういう「舞台っぽい演出」へのこだわりが貫かれているのには、非常に好感が持てました。しかし、よくこんな地味な企画が通って劇場公開までこぎつけたものですねえ。

 そして、この作品の素晴らしさというのは、「次々と事実が暴かれていく面白さ」と同時に、「アイドルとは何か?」「アイドルとファンとの関係とは何か?」「アイドルオタクって、そんなに異常な人種なのか?」というようなことについて、けっこう真面目に考えさせてくれるという点にもあるんですよね。実は「リアルでの距離が最も遠い人のほうが、心の中ではいちばんの『理解者』『支援者』だったりするという感覚」って、こうしてネットで文章を書いている僕には、なんとなくわかるような気がするのです。バーチャルなつながりだからこそ、通う「情」っていうのも、今の時代には確実にあるのではないかと。
 たぶん、この映画を観ていない人には何の話だかよくわからないと思うのですが、肩が凝らずに観られて、思わず「うまいなあ、いいなあ!」と呟いてしまう作品です。アイドルとかオタクというような世界には絶対関わりたくない!という人でなければ、一見の価値はあるのではないかと。

 個人的には、ちょっと「蛇足」だと思うところもありはしたんですけど、本当に「予想外の良作」でした。

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