琥珀色の戯言

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空中ブランコ ☆☆☆☆


空中ブランコ (文春文庫)

空中ブランコ (文春文庫)

出版社/著者からの内容紹介
傑作『イン・ザ・プール』から二年。伊良部ふたたび!
ジャンプがうまくいかないサーカス団の団員、先端恐怖症のヤクザ……。精神科医伊良部のもとには今日もおかしな患者たちが訪れる。

 『サウスバウンド』のオビに書かれていた「おもしろい小説、あります」というキャッチコピーが印象的だった奥田英朗さん。僕も奥田さんは「面白い小説」を書かせれば、当代の男性作家髄一なのではないかと思います。あと、コンスタントに「面白い小説」を書く人としてすぐ思いつくのは、重松清さんと伊坂幸太郎さんかな。
 その奥田さんの直木賞受賞作が、この『空中ブランコ』なのですが、まあ、当然のごとく面白いんですよね。一篇一篇の長さもちょうど良くて読みやすいし、すべての作品のオチも見事にまとまっています(とくに表題作)。
 ただ、この『空中ブランコ』については、正直ちょっと「物足りないな」という気もしたのです。この作品集は、精神科医・伊良部シリーズの第二弾なわけですが、第一弾の『イン・ザ・プール』に比べると、あまりにも「明るすぎる」というか。
 『イン・ザ・プール』は、あの『笑うせぇるすまん』を彷彿とさせるようなブラックなオチが印象的だったのですが、この『空中ブランコ』は、みんなそれなりに「ハッピーエンド」になっています。もちろん、読後感は『空中ブランコ』のほうがさわやかなのですけど、逆に「優等生すぎて物足りない」とも感じてしまうんですよね。伊良部シリーズが、こんな「美談」でいいのか?と。 
 事実かどうかはわからないのですが、Amazonのレビューで、ある方がこんな話を紹介されていました。

本作品は、作者が原因不明の腹痛におそわれ、「神経科」に通院した際、2週間ごとの受診が楽しみであった、という実体験を元に書いたそうであり、伊良部のモデルは、同姓のプロ野球選手と、漫画「こまわりくん」キャラを合わせたものだそうである。

 「こまわりくん」はわかるんですが、伊良部投手……名前だけじゃなかったのか……
 あと、『空中ブランコ』と入力しようとすると、いつのまにか『空中キャンプ』になってしまうので困ります。

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