琥珀色の戯言

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『UDON』感想(再掲) ☆☆☆


UDON スタンダード・エディション [DVD]

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BIG!になるため讃岐を飛び出した男――松井香助(コースケ)(31才)。田舎暮らしに嫌気がさした香助は父親と大喧嘩した挙句、
NYへ……。だが、案の定、武者修行も夢半ばで挫折。たっぷり背負った借金に追われながらの凱旋?帰国。大嫌いだった
故郷では、いつも心配ばかりかけ通しの優しい姉と、うどんを打つことしか知らないガンコな親父、昔のままの友人たち、世話
好きな近所のおばちゃん、そして、温かい「うどん」が待っていた。
そんな香助が、タウン情報誌編集者・恭子とともにひょんなことから出会った「うどん」の魅力は、次第に大きな湯気を立ち上げ
日本中を包み込む!?

 なんのかんの言いながら、2時間10分を超える映画を最後まで観られたということは、けっして「腹が立つほどつまらない作品」ではないんでしょうね。でも、「結局何が言いたいのこれ?」という疑問ばかりが残る映画ではありました。
 テーマにしても、前半30分は「うどん」についての薀蓄が語られて、「うどんという食べ物の魅力を描いた映画」なのかと思いきや、中盤は「うどんブーム」とその終焉をテーマにした、「社会現象というものの残酷さを描いた映画」になり、最後は「親子愛のお涙頂戴映画」として終わっていくという混乱っぷり。いろんな要素を詰め込みすぎて、かえって何が言いたいのかよくわからない作品になってます。「笑わせよう」としているシーンもいくつかあったみたいなんですけど、全然笑えませんし。そして、泣かせようとしているシーンはあっても、泣けるシーンはない。小西真奈美さんやトータス松本さんは頑張っていますし、普通の2時間ドラマとして観るならば、「まあこんなもんか」というレベルなんですけどねえ。ただ、「松井製麺店」の主人(主人公の父親)である木場勝己さんには、正直ちょっとだけ泣けたんですけど。あと、この映画でいちばん僕が好きだったシーンは、ユースケさんとトータス松本さんが、「祭り」が終わったあとの後片付け中の閑散とした会場で、ウルフルズの『バンザイ』を熱唱するシーンです。なんだか学園祭が終わったあとに後片付けをしていたときのことを思い出して、ジーンとしてしまったんですよ。
 まあ、小西真奈美さんかユースケさんが好きな人か、ウルフルズを久々に聴いてみようかな、という気分の人は、観てもそんなに損はしないと思います。

 以下、僕がこの映画でいちばん疑問だったところを書きますが、ネタバレなので隠しますね。これから観る予定の方は、読まないことをオススメします。



 それで、僕がこの映画を観ていていちばん「そりゃないだろ」と思ったところは、クライマックスの、お父さんが亡くなったあとに、松井香助(コースケ)が「親父の味」を再現しようとするところなんですよね。この映画のなかでは、「完璧じゃないけど、それに近い味」が再現できて、お客さんたちは満足、みたいな結末になっているのですが、僕はそれを観て、「この映画は、お父さんを、松井のうどんを、『名人芸』ってものを、すべからくバカにしているんじゃないか?」とものすごく嫌な感じがしたんですよね。「自分にはうどんしかない」と長年うどんを打ち続けてきた「名人」の味を、今まで本格的に修行したこともないような息子が(いくら熱心に研究したとはいえ)四十九日までという短い間に「それなりに再現」できるってあんまりにも簡単すぎるんじゃないの?って。讃岐うどんの世界って、そんなに甘いものなの? 名人の「技術」って、そんなものじゃないだろう、と思うんですよね。これって所詮「愛の貧乏脱出作戦」レベルじゃん。「そういう映画」なんでしょうけど、僕はそんなふうに物事が簡単すぎる映画って、あんまり好きじゃないんです。というか、この映画はタイトルが『UDON』にもかかわらず、うどんとそれを作っている人たちへの愛情とか敬意とかが不足しているようにしか思えません。「うどん」の映画が撮りたかったわけじゃなくて、「何か企画ないかな」ということで、偶然「うどん」に行き当たっただけにしか見えないんですよ。
 まだ髪が長かった頃の眼鏡+ドジっ子の小西真奈美さんが観られるのは良いんだけどねえ……
 この作品で、フジテレビとしては「うどんブーム」を起こそうとしていたのかもしれませんが、その点でも「失敗作」だと言わざるをえないでしょうね。レンタルで観るには丁度いい感じなので、採算は合うのかな。

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