琥珀色の戯言

【読書感想】と【映画感想】のブログです。

サウスバウンド ☆☆☆


◆ストーリー
「税金など払わん、学校へなんか無理に行かなくていい」 子供の迷惑顧みず、"不正"に
向かって突進するオヤジ・一郎は、元過激派。小学生の二郎と妹・桃子は、
そんな父親を迷惑な存在だと思っていた。だが、二郎が友達のためにいじめっ子に手向かった
ことが学校で問題になると「我が家は沖縄の西表島に引っ越すことにします!
誰もが歩む人生に、たいした価値があるとは思えないので、東京での生活を終わりにします」 と宣言!
一家は沖縄へ移住する。偽善を嫌い、自分の道をまっすぐに突き進む父の姿に、二郎は
「親父って、すげぇ!」と父を見直していく。 だが、この地でも一郎は観光開発業者と闘う
羽目になってしまう…。

 この映画、豊川悦司天海祐希の両優をはじめとするキャストは良いし、ロケ地の沖縄の風景はものすごく綺麗で癒されます。しかしながら、脚本に問題があるというか、そもそも、あれだけの長編を2時間の映画に無理やり収めてしまおうとしたのが失敗なのでは、と思います。
 原作は「おもしろい小説、あります」とオビに堂々と書かれていて、しかも本当に面白かったというすごい作品なのですが、とりあえずこの映画版は、時間の制約から「おおまかなストーリーを追いかけるだけのダイジェスト版」になってしまっているんですよね。
 原作の面白さというのは、前半の東京編ではとにかく「自分の父親がこんな感じだったらイヤだろうなあ……」としか思えない元過激派の一郎が、後半の沖縄編を読み進めていくうちに、「徹底的に大きな力と戦おうとしている姿」を応援したくなってくる、というところなのです。
 ところが、細かいエピソードを描けるほどの時間がないため、「中途半端にイヤなオヤジ」である一郎が、「中途半端にカッコよく開発会社に立ち向かっていく」という、あんまりカタルシスを感じない話になってしまいました。
 そして、僕はトヨエツ好きなんですけど、この一郎役は、もっと見かけも行動も破天荒な感じの人、たとえば藤原喜明さんみたいな人のほうが良いんじゃないかとも感じたのです。トヨエツだと、「カッコよすぎる」んだよね、原作のイメージでいくと。
 なんというか、森田芳光監督の「とりあえず無難にまとめてみました」という仕事っぷりが伝わってくるようで、面白い原作も、すばらしい沖縄の風景も、個性派揃いのキャストも、そして、森田監督の本来の才能も、なんだかとても「もったいないなあ、惜しいなあ」と思いました。
 ものすごくつまんないわけじゃないんだけどねえ……


参考リンク:『サウスバウンド』小説版の感想

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