- 作者: 志村けん
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2002/09/30
- メディア: 文庫
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内容(「BOOK」データベースより)
女の子が大好きで、正体がバレるとヘンテコな踊りをするコントの役柄、それがご存知「変なおじさん」。でも僕は、この自分の分身が大好き。なぜなら僕も、ずっとお笑いにこだわってきた変なおじさんだから。子供の頃、コメディアンになろうと思い、ドリフの付き人から『全員集合』『だいじょうぶだぁ』『バカ殿様』とお笑い一直線。そんな人生50年をちょっとだけふり返ってみたヨ。
この本を読んでいて感じたのは、「志村けん」という人は、ものすごく照れ屋なんだなあ、ということでした。志村さんのブログでもそうなのですが、あれだけテレビに出ている「芸人」であるにもかかわらず、志村さんが書いている(「お笑い」へのこだわり以外の)文章にはあまり「熱さ」が感じられず、プライベートについてもあまり触れられていません。この本、いかりや長介さんが書かれた『ダメだこりゃ』に比べると、とても淡々としていて、「志村けんがひとりで酒を飲みながらボソボソと呟いているような話」がけっこう多いんですよね。
いや、だからこそ、志村さんは、「お笑い芸人、志村けんを演じること」にこだわりつづけていられるのかもしれませんけど。
この本には、『志村けんのだいじょうぶだぁ』で実際に放送された「ひとみさん」のコントの台本が収録されているのですが、コントの台本というのをはじめて読んだ僕は、こんなに緻密な台本がつくられているのか、と驚きました。おおまかな筋だけが決めてあって、あとは現場のアドリブでやっていくようなものなのではと思っていたので。
最近の志村さんの活動をテレビで観ていると、やはり「緻密な台本」に基づいたコント中心の番組というのは、今の時代のテレビでは(視聴率的に)難しいのかもしれませんが……
作りこまれたコントっていうのは、観る側にもある種の緊張感を要求するものですしね。
突然、誰かが突拍子もないことを言ったりやったりするようなコントは、若い人たちにはわかるのかもしれない。けど、僕の世代になると、まわりにそういう人間がいないから、なかなか理解できない。新しいコントというよりも、これが今のコントなんだって言うために、無理して新しいことをやってるんじゃないかって気もしてくる。
やっぱり僕は、子供が見ても、大人が見ても、年寄りが見ても、笑えるコントをやりたい。だから、どうしても設定が大事だと思うし、出てくる人間が真剣になればなるほどおかしく見えるってコントになる。それには、芝居がちゃんとできることが大事だろう。
もちろん、笑いにはいろんな形があっていいから、どれがいい悪いって話じゃない。
ただ僕は、笑いには今も昔もなくて、普遍的なものだと思っている。
実は、僕はリアルタイムで『全員集合』を観ていたときには、自分も子供だったくせに、「こんな子供っぽい番組、どこが面白いんだ?」ってずっと感じていて、けっこうすぐに『ひょうきん族』に乗り換えてしまったんですよね。
でも、今あらためて当時のドリフを観てみると、リアルタイムで観ていたときよりも、面白く感じるんですよ。
むしろ、当時「新しい」と思っていた『ひょうきん族』のほうが「懐かしい」。
志村さんは本当に真摯に「笑い」に向き合っている「笑いの殉教者」のような気がします。
志村さんは、最初から、それこそ『全員集合』の時代から、「普遍的なもの」を目指していたのか、そうでなければ、どの時代から、何をきっかけにそういうふうに考えるようになったのか?
僕はそれが知りたいな、と思うのですけど。