琥珀色の戯言

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チャーリー・ウィルソンズ・ウォー ☆☆☆


『チャーリー・ウィルソンズ・ウォー』公式サイト

解説: 1980年代に実在したテキサス出身の下院議員チャーリー・ウィルソンが、世界情勢を劇的に変えた実話を映画化したコメディディータッチのヒューマンドラマ。『卒業』のマイク・ニコルズがメガホンを取り、アフガニスタンに侵攻したソ連軍を撤退させてしまう破天荒な男の姿を描く。主人公をトム・ハンクスが演じるほか、ジュリア・ロバーツフィリップ・シーモア・ホフマンアカデミー賞に輝く演技派が脇を固める。お気楽な主人公が世界を変えてしまう奇跡のドラマに注目。(シネマトゥデイ

あらすじ: 酒と女が大好きだが信念もある下院議員チャーリー(トム・ハンクス)は、反共産主義者で大富豪の恋人ジョアンヌ(ジュリア・ロバーツ)にパキスタンに行くことを薦められる。現地に赴いたチャーリーはソ連軍の侵略から逃げる大量のアフガニスタンの難民たちの姿にショックを受け、ソ連軍と戦うゲリラたちに武器を密輸してしまう。(シネマトゥデイ

たったひとりで世界を変えた 本当にウソみたいな話。

 この映画、予告編で僕が受けた印象と実際の内容に、かなりギャップがあるように感じました。
 『キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン』みたいな、風刺をこめつつもユーモアあふれる物語だと思っていたのですが。
 「テキサス選出の田舎議員が、たったひとりで世界を変えた」という予告でのイメージに比べて、映画のなかでのチャーリー・ウィルソンは問題行動(麻薬使用や女遊びなど)は多いものの、議会に豊富な人脈を持ち、国防予算小委員会のメンバーでもあるという「かなりの権力者」なんですよね。
 予告のときに僕をワクワクさせた、「無力な田舎議員が、知恵を尽くして奇跡を起こす」話ではなくて、チャーリー・ウィルソンのやりかたは、まさに「政治家的な正攻法」で、彼がやったことも「アフガン難民の姿に同情した気まぐれな男が、さらなる憎しみの連鎖を生み出してしまっただけの話」のようにしか思えませんでした。いや、ソ連も酷いけど、アメリカだってそんな「正義の軍隊」じゃなかっただろうよ、と。
 その一方で、「では、ああいう形で、隠密裏にアメリカがアフガニスタンを援助しなければ、アフガニスタンの人たちは今より幸福になっていたのか?」と問われると、言葉に詰まってしまうのですけど……

 結局のところ、僕がこの映画で痛切に感じたのは、「小国は大国のエゴに振り回されるしかないのだ」という、底知れないやるせなさでした。あとは、歴史というのは、ときに、個人にとてつもない役割を与えてしまうことがあるのだ、ということ。僕は豪快に「酒だ!女だ!」と遊べるタイプではないのですが、確かに世の中って不公平にできていて、「適度に遊んでいる(ように見える)人のほうが、コツコツと真面目にやっている小市民よりも、大きな仕事をしたり、社会的に力を持っている」と感じることは多いのです。

 「御都合主義なアメリカン・ヒーローの物語」だけではなく、それなりに「苦味」も加えられてはいるのですが(実際、アメリカはこの戦争で「未来のアメリカの敵」にも武器と訓練を供与してしまったわけですし)、これは日本人にとっては、なかなか素直には愉しめない映画なのではないかなあ、と思います。
 トム・ハンクスジュリア・ロバーツが出ている映画は、全部映画館で観ないと気が済まない、と言う人以外は、「DVD待ち」で十分ではないかと。個人的には、フィリップ・シーモア・ホフマンが良かったです。

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