琥珀色の戯言

【読書感想】と【映画感想】のブログです。

私、ショッカーの味方です ☆☆☆


私、ショッカーの味方です

私、ショッカーの味方です

内容紹介
最初の実写版仮面ライダー全100話から、「なぜ~だったのか」というQ&A形式で100本(各見開き単位)。章立ては「首領」「大幹部」「怪人」「戦闘員」「科学者」「作戦」「組織」「敵」。毎度毎度世界征服の野望を打ち砕かれるショッカーへの深い同情をベースに、作戦や設定、物語の素朴な疑問はヘンなところをほじくるようにとりあげ、勝手な解釈で答えを出します。仮面ライダーを知ってる人に楽しい読み物として提供します。

 書店で見かけて面白そうだったので購入。中学〜高校まで、ちょっとした特撮マニアだった僕にとっては、なかなか愉しめた本でした。特撮モノって、「ヒーローの活躍を観て快哉を叫ぶ」ほかに、「ショッカーなどの悪の秘密結社のくだらない作戦をバカにする」という悦びかたもあるんですよね。著者の円道さんは、そのへんもある程度わかってくれているみたいです。
 ただ、この本を読んでいて「物足りない」と思ったのは、「内容紹介」にもあるように、「勝手な解釈で答えを出している」ところ。同じような読者層であると思われる『空想科学読本』シリーズや豊福きこうさんの「ブラック・ジャック『90.0%』の苦悩」などでは、「事実」と「著者の解釈」のあいだに、「膨大な計算式やデータ集め」というプロセスがあり、その「それらしいプロセス」の部分こそが、「面白い」し、「読んでいて自分なりの解釈ができるところ」なのですよね。
 ところが、この『私、ショッカーの味方です』の場合には、「疑問」に対して、「『仮面ライダー』シリーズを観ての著者の解釈」が提示されて、それでおしまい。類書に比べて、「根拠が弱い」「思いつきを並べている」ような印象です。
 「大リーグボール2号」が「消える」理由が、「超能力」だったら、たぶん、あんなにインパクトはなかったと思うんです。それが実際にできるかどうかはさておき、「地面にワンバウンドするときに土ぼこりでボールが消える」という、「理由」があったことが、「2号」を不滅の魔球にしたのではないでしょうか。「どうせフィクション」だからこそ、「それらしい理由」の有無って、そこにツッコミを入れる楽しみも含めて、観客にとってはけっこう重要なことなんですよ、とくにこういう本では。 
 この本のひとつの「売り」は、「ショッカーの作戦・全リスト」なのですが、このリストが、

作戦48
[目的]自由に風景を作り出すプリズムアイ装置で、世界中を混乱させる
[担当]海蛇男
[結果]海蛇男が負けた

この[結果]のところ、前半の4分の1くらいまでは、けっこう詳細に「プロレス会場でピラザウルスがライダーに負けた」と書いてあるのですが、最後のほうは、「○○(怪人の名前)が負けた」のオンパレード。後半は疲れてきたのか、明らかに手抜きっぽくなってます。うーん、わかってないんだよなあ……ちょっとディテールを加えるだけで、マニアたちの記憶をくすぐることができるのに……

 子供心に「秘密基地」って看板が掲げられている秘密基地はいくらなんでもおかしいだろ……と感じていたことを思い出しながら、けっこう楽しく読めたんですが、このテーマだったら、もっと面白くできたんじゃないかな、と残念な気もします。

 ところで、この本のタイトルが、村松友視さんの『私、プロレスの味方です』のオマージュであるということに、どのくらいの人が気づくのでしょうか?

私、プロレスの味方です (新風舎文庫)

私、プロレスの味方です (新風舎文庫)

↑いちばん新しい文庫版は、あの「新風舎」からなのか……

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