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琥珀色の戯言

【読書感想】【映画感想】のブログです。2016年8月より、『はてなブログ』に移行しました。

『ゲド戦記』感想(再掲) ☆☆☆

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ゲド戦記』公式サイト:http://www.ghibli.jp/ged/

あれだけダメだ酷いと世間で言われていただけに、率直なところ、僕は黒い期待を抱きまくりで観にいきました。
これは、どんなに酷い作品か見届けて、ネタにしなければ!と。
それで、2時間くらいの作品を観ての感想なのですが、元々の期待値がかなり低かったせいもあって、「思ったほど劣悪な作品でもないのかな」と思います。もっとも僕は原作の『ゲド戦記』は1冊も読んだことがないので、原作との比較はできませんが。
(これを観たあとで、原作で内容を補完してみたいという気分になって、1巻を買ってきました)

以下ネタバレ感想です。


全体的にジブリのアニメーションとしてはレベルが低い作品だという気はするのです。絵もシナリオも演出も。
主人公・アレンがなんで父親を手にかけたのか、その理由が全然わからないし(いや、どうみても劇中ではまともな人そうでしたから)、テルーを助けたあと、なぜかいきなりテルーは「命を大切にしないやつは、大嫌いだ!」とか怒りはじめるし。それで、人に馴染まないはずのテルーが、ハイタカになつくのはわかるんだけれども、あれだけ拒絶しまくっていたにもかかわらず、なぜか急にアレンに親愛の情を示すようになるのです。それも、何がきっかけなのか全然わからない。そして、あれだけ長い間「影」を克服できなかったアレンが、テルーにちょっと説教されたくらいで、いきなり影を克服しまくって、強い青年になるっていうのは、ちょっとあんまりなんじゃないかい。ちょっと『噂の刑事 トミーとマツ』を思い出しましたよ。そして最後は、テルーがいきなり竜に!そんな話聞いてないよ。ナムコの『ドラゴンスピリット』か?
アレンが国に還っても、「父親殺し」の罪を償ったら、絶対に死刑か一生座敷牢だろ普通。少々劇中で良いことをしても、全然共感できません。
あと、ハイタカ弱い。あまりにも情けねえ。あれが「大賢人」なのかよ。「七鍵守護神」くらい使えよ。ヘソまでそそり立ったオレの「ピー」が! あんなにあっさり捕まるなんて、そして、結局最後まで観てるだけじゃん。城に乗り込んでくるところは、激安の「ロード・オブ・ザ・リング」みたいだったものなあ。

こんなふうにツッコミどころ&不満点満載の作品なわけなのですが、この作品は全体のバランスとして、「低レベルでまとまっている」という意味で、そんなに悪くはないのではないかな、とも思うのです。
というか、シナリオに関しては、最近のジブリ作品は、『千と千尋の神隠し』『ハウルの動く城』と、かなり酷いものが続いていたんですよね。みんなもう忘れてしまっているのかもしれないけれども、「ハク」は「琥珀川」という川だった!とか、「そろそろこの無意味な戦争を終わりにしましょう」というような魔女の気まぐれで終ってしまうバカバカしい戦争とか、なんだかこう、「ハァ?」って呆然としてしまうような「8時45分の猪木の延髄斬り」的な無理やり平和主義、強引な自然礼賛的な「ジブリ作品」のシナリオには僕はもうガッカリさせられまくりなので(そもそも、「魔女の宅急便」みたいな「文部省推薦的な教育臭さ」って観ていてシラケませんか?)、『ゲド戦記』が、特別に劣悪である、というわけではないと思うんですよ。ああいう「強引な解決法」とか「説教くさいテーマ語り」なんているのは、最近のジブリ作品すべての「お約束」でしかないのだから。

でも、僕が『ゲド戦記』に対していちばん不満だったのは、絵がダメなところなんですよね。あれは狙っているんだ、ということなのかもしれませんが、少なくとも『ハウル』で城が動いているのを始めて観たときのような、「おおっ、この動きは凄い!」っていうような感動や、『千と千尋』の列車の場面のような叙情的なところや個性的なキャラクターが、全く『ゲド戦記』には観られませんでした。悪い人たちは、ちょっと『ヤッターマン』みたいで懐かしかったですけど。
実は、ジブリ作品って、シナリオはもともとダメで「印象的な絵」を見せることで人々に評価されてきたのではないか、と僕は考えています。いいかげんなシナリオでも、ずっと記憶に残る「場面」があれば、それは「良い作品」として記憶に残っていくのではないでしょうか。「トトロ」なんて、「雨の中たたずむトトロ」という場面の静かな美しさ(そして、音楽の素晴らしさも忘れてはいけないと思うけれど)だけで、長年名作として君臨しているのです。『ゲド戦記』は、見せ場のはずの竜の場面にしても全然迫力がなくて「マンガ日本昔ばなし」のオープニングを思い出して苦笑してしまったものなあ。

というわけで、噂のごとくダメ映画なのですけれども、まあ、低レベルでまとまったダメさだったので、このくらいダメな映画はたくさんあるよ、と感じたのも事実です。
そして、宮崎吾郎バッシングに対しては、僕としては「初監督作品なんだし、そこまで叩かんでも……」とは思います。

しかし、宮崎駿の「劇場映画初監督作品」というのは、あの「ルパン三世カリオストロの城」なので、やっぱり凄い人は最初から凄かったんだな、というのは、厳然たる事実なんですよね……