琥珀色の戯言

【読書感想】と【映画感想】のブログです。

少女七竈と七人の可愛そうな大人 ☆☆☆☆


内容(「BOOK」データベースより)
「たいへん遺憾ながら、美しく生まれてしまった」川村七竃は、群がる男達を軽蔑し、鉄道模型と幼馴染みの雪風だけを友として孤高の青春を送っていた。だが、可愛そうな大人たちは彼女を放っておいてくれない。実父を名乗る東堂、芸能マネージャーの梅木、そして出奔を繰り返す母の優奈―誰もが七竃に、抱えきれない何かを置いてゆく。そんな中、雪風と七竃の間柄にも変化が―雪の街旭川を舞台に繰り広げられる、痛切でやさしい愛の物語。

 「可愛そう」なのは、「たいへん遺憾ながら、美しく生まれてしまった」少女・川村七竃なのか、それとも、25歳のある朝とつぜんに「辻斬りのように男遊びをしたい」と思い、それを実行してしまった川村優奈と、その周囲の大人たちなのか?
 年齢的には「アラフォー」の男であり、美しくもなければ、いんらんになりたいという発作にみまわれたこともない僕としては、なんだか「別世界の物語」のようであり、その一方で、「大人という存在の不安定さ」に深くうなづいてしまったりもする、不思議な手触りの小説でした。
 こういう話は、まさに桜庭一樹の得意技。
 僕は、「ものすごく美しいもの」にもなれず、「大人にならない」勇気もない、七竃の後輩・緒方みすずの姿に、なんだかすごく心を打たれて、涙が出そうになってしまいました。
 続きを読みたいような、読まないほうがいいような、そんな小説。

「要するにわたし、おかあさん、あなたのことを生涯ゆるせない気がするのです。ほんのすこしだけなら、どうでしょうね。むりでしょうか。時が、解決するのでしょうか。いんらんなあなたを。なにも省みず、旅を続けたあなたを。ふふふ、どうでしょう」
「……どうかしらね」

男としては、「母親と娘」という関係の複雑さを少しだけ覗いたような気分になる小説です。

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